誇り

誇り

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取材、文:久堀嘉洋・山瀬理恵子

「ビッグフラッグ」とは?

スタジアムでの選手入場時などの際に、ゴール裏やバックスタンドに掲出される巨大フラッグのことです。
大きいものでは50メートルを超えるものもあります。
クラブの歴史や重み・スタジアムでの一体感を打ち出し、選手の背中を後押しするクラブの象徴とも言えるフラッグです。

夫の所属する京都サンガF.C.にも、2004年秋に初代ビッグフラッグ「鳳凰」が誕生しました。
今回ご紹介させて頂く、現在のビッグフラッグ「紫魂」は2014年春からの2代目です。

一度でも西京極スタジアムへ観戦に来られた方は、ゴール裏で高らかに掲げられている初代・2代目いずれかのビッグフラッグをご覧になられたことがあるかと思います。

2015年秋・「紫魂」の制作に携わり、ブラッシュアップ(ベースは崩さずに改良)されたデザイナー久堀嘉洋さんとの出逢いがあり、あの1枚の大きな旗の中に様々な想いが込められていることを知りました。

「紫魂」が誕生するまでに、京都サンガF.C.・京都パープルサンガ後援会・そしてサポーター連合会と多くのサポーターの方々の熱い想いが刻まれたストーリーをぜひご紹介させていただきたいと思います。

【2013年7-8月】一般公募と投票
2014年に迎える京都サンガF.C.法人化設立20周年を迎えるにあたり、京都パープルサンガ後援会とサポーター連合会を中心に、「ビッグフラッグ2013作成委員会」が設立されました。
クラブ創設時からのサポーターの方は、設立時にこのように語られています。

「大きなクラブにはビッグフラッグが何枚もあり、それが歴史の重みや成長の歩みを表している。クラブ設立20年にふさわしい、京都らしいイメージのデザインになれば」

そして「京都の誇り!-新たなビッグフラッグを創ろう!-」をプロジェクトコンセプトとし、一般公募により作品募集が始まります。

一次審査を通過し、西京極スタジアムでの最終選考会に選ばれた作品は以下の5点。
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結果、西京高校の金高昂太郎君・加藤智行君の作品が1位に決定。
後のサポーターズマガジン「ムラサキノキモチ vol.21」にて2人のコラムが綴られています。

「最も表現したかったのは京都の誇りです。このビッグフラッグが、選手やサポーター・チームに関わるすべての人たちを奮い立たせるだけでなく、『俺たちがサンガだ』という威厳を他チームに誇ることができるような象徴になることを願っています」

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【2013年9-11月】募金活動とデザインリメイク

西京極ホームゲームにて、サポーター連合会の皆さんやサポーター有志による募金活動が開始されます。

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また、同会で作成したプロジェクトTシャツやキーホルダー販売・募金を頂いた方へは記念ストラップを贈呈。

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クラブにもユニフォームオークションを開催して頂き、販売収益は全てフラッグ作成の募金へ。

対戦相手のサポーターからの募金を目にすることもしばしば。叱咤激励やエールを頂く貴重な場となりました。
募金額は最終的に目標金額の250万円を達成。制作費は約150万円・余剰金は、今後の修繕やメンテナンス費に充てられています。

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募金活動と並行し、デザイン面でのブラッシュアップが開始されました。

印刷データとしての課題や不具合が残っていた為、サポーターでありグラフィックデザイナーの久堀さんが引き続きサポート・進行することに。

西京極のゲーム前に毎回検討会が行われ、ただひたすらブラッシュアップと修正の日々。全体の意思統一として当選作品のニュアンスは65%は保持したまま、35%程リメイクする姿勢を最後まで意識付けられました。

少しずつバランスを調整・様々な方からの意見・提案を加味しながら、20以上の経過案を経て完成へアプローチ。

以下はブラッシュアップを施した主なポイントです。

・京都サンガのホームスタジアムである西京極スタジアムを中心に配置し、地面シルエットを盆地独自のゆるやかなお椀型へ。
・京都の街のシンボルの配置(二条城・祇園祭の鉾・大文字山・鳥居・五重塔・京都タワー・舞妓さん)。
・「紫魂」の字体は当選作品をベースに肉付けし、南側スタンドからでも読み取れる視認性を維持。
・透かしの花柄の挿入(詳細は後述します。ココが一番驚きました!)

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【2013年12月-2014年3月】フラッグの完成とお披露目
多くの修正と調整を重ね、2mのテスト印刷後に作成が開始されました。
年が変わった3月上旬、多くの方の京都の街に対する想いと「京都サンガF.C.」というクラブの歴史が織り込まれた、幅35m×高20mの新しいビッグフラッグ「紫魂」が誕生しました。
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【2014年3月8日】サンガタウン城陽にて内覧会
練習後の夫も、Aグランドに大きく広げられた「紫魂」をこの時初めて見たそう。

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「入場時、スタンドいっぱいに掲げられるビッグフラッグを見ると、一気にテンションが上がる。胸がわき上がってくるような感覚を憶える。ビッグフラッグというのはある意味チームの顔。初めて目にした時は、この大きな旗が僕ら選手達に与えてくれるパワーはとてつもなく大きいと思った。今回の取材を機に、細部にもこだわりを持っていることを知り、ますますフラッグへの思い入れが強くなった。京都らしい粋や余韻も感じます。一選手として、京都の誇りを胸に闘っていきたい。」(山瀬功治)

【2014年3月16日】2014年開幕戦・対栃木戦にて表彰式&完成披露
クラブ設立20周年となる、記念の年のホーム開幕戦を迎えました。
早朝から多くのサポーターが集まり、完成披露の準備や進行確認。
当選された金高君・加藤君お二人の晴れやかな表彰式。
試合直前、ついに西京極のピッチに広げられた雄大な鳳凰の翼のような力強い「紫魂」。

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通常は試合前およびサンガの勝利後に掲げられますが、この日だけはハーフタイム時にもゴール裏スタンドで掲揚。

1年がかりで活動された「サンガサポーター」「京都パープルサンガ後援会」「京都サンガF.C.」それぞれの想いが実を結び、数多くの試行錯誤を経て緑のピッチに映えたビッグフラッグは誇らしく。それまでの多くの方の努力が報われた瞬間だったと聞きました。

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「将来デザイナーを辞めるまで、これ以上大きなモノを作ることはないと思います。言葉がわかるようになったら、子どもに、フラッグへの想いを伝えたい」(久堀嘉洋)


これから先、この「紫魂」の下で多くのサンガサポーターがたくさんの思い出やストーリーを紡いでいくことを願ってやみません。


【2015年11月23日】

2015年最終戦。この目で確かめるべく自らゴール裏に潜入。実際の中の様子を観察して来ました。
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「紫魂」の下に入ってみて、何よりも感動したこと。

京都サンガを象徴する紫の中に、たくさんの花が鏤められていることが分かったのです。

花の由来は、何と各ホームタウンの市花!

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京都市 …サトザクラ
向日市 …ヒマワリ
長岡京市 …キリシマツツジ
亀岡市 …イワツツジ
宇治市 …ヤマブキ
城陽市 …ハナショウブ
京田辺市…ヒラドツツジ
木津川市…コスモス


ツツジ系の花が多かった為に、おしべの数を明確に変えることで差別化したとか。

各ホームタウンの市花テクスチュアは、次点作品(久堀さん)に敷かれていました。「そのまま落選するには惜しい。当選作品に透かしとして起用するのはどうか」というあるサポーターの方の言葉がきっかけとなり採用。

私がいたのは京田辺市の「ヒラドツツジ」の下です。

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ビッグフラッグの下に入った人だけが覗き見られる、あまりにも美しい秘め事。(写真撮影:山瀬理恵子)

迸るエネルギー。

ここに携わるたくさんの人の想い、願い、祈りが集結する。

ムラサキの誇りは、掌を合わせ、突き動かされるように大空へたなびく。

それぞれの市花が鮮やかに咲きみだれ、歓喜の大合唱を巻き起こす時、それは未来へと時を繋いだことを意味するのでしょう。

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いつも支えていただき本当にありがとうございます。

「紫魂」の誇りに恥じぬよう、選手ファミリー一同、誠心誠意闘います。(山瀬理恵子)

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※この投稿におきまして、たくさんのサポーターの皆様、関係者の皆様にお時間を頂戴しご協力いただきました。

心より感謝申し上げます。