【山瀬理恵子の今日もアス飯vol.39公開】栄養構成解説 味の明太子のふくやYouTube

【レシピ誕生秘話】

この回でふくやさんからいただいたテーマは『複数の冬野菜をたっぷり使った明太子メニュー』の開発。どの野菜をピックアップするかを迷ったが、冷蔵庫にある旬の野菜であればどれでも合い、手軽に調理ができるという方が作る方にとって嬉しく、取り組んで貰いやすくなる為、食材を選ばないシンプルな味で構成していく。今年はゆらりの大将からいただいたかぶが美味しく、また火の通りも早い食材であることから、かぶをメーンにした冬野菜を使用することにした。明太子と香気成分のみで全体を纏めるので、試作段階で野菜のみで調理した時は若干の物足りなさと苦みが浮き立つような粗さが気になる。よってうま味のプラスとトータルの抑えに合挽き肉を使用。より優しくしたければ注目の抗疲労成分イミダゾールジペプチドを含む消化の良い鶏むねひき肉を利用すると良いだろう

自身のレシピの数字は1の位を0か5、もしくは1/4カットなど、分かりやすく潔い数字が多い。何故なら家庭で使用する調味料は砂糖ひとつをとっても、醤油にしても、全て千差万別。(甜菜糖、黒糖、うす口醤油、濃口醤油、うま味が添加された甘めの醤油など本当に様々だ)更に例としてトマトをピックアップしてみよう。大きさも糖度もまるで違う、食材ひとつからして個体差が大きい。家庭にシェアされた時点で、作り始める前から既に相当な誤差が生まれているからだ。ここに想像力や焦点を持っていくと矛盾からのスタートとなり脳内が混沌とする。料理家として、どんな食材や調味料が来たとしても『美味しいの閾値』をいかにして広げられるのか。作り手への最大限の思いやりを持つこと、また、自身が毎回目標としているチャレンジである。これを踏まえて出すキリの良い葛餡の分量(数字)に対して明太子の50gは、例え閾値を想像したとしても、仕上がりの塩気が遠いイメージだ。明太子をプラスして塩分量を引き上げるより、塩を入れることでキリの良い50gの量で明太子のうま味を再び引き出せるように調整した方がレシピとしての見栄え、そしてクオリティが高い。またカロテノイドの吸収率を高めるためオリーブ油での炒め調理を選択した。

かぶの最大の特徴は生食出来ること。我が家ではスープ系で使うことが多いが、炒め調理もこれまた美味である。短時間で火が入ることや消化が良いため、お子さんや高齢の方にも推奨出来る。根の白い部分、緑の葉の部分、それぞれに栄養特性があり、特に甘みを増す今の時期の冬にたっぷり食べたい野菜。辛味成分は解毒系抗酸化物質のアリルイソチオシアネート。これはアブラナ科の野菜に特徴的。また、かぶの葉のβ-カロテン含有量は小松菜に近く、ビタミンCは根(胚軸)の4倍以上。カルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラル類や食物繊維も豊富なので余さず使いたいところ。油脂と一緒に調理したり、さっと炒めることでカロテノイド色素のβ-カロテンの吸収率が上がる。豊富なカルシウム、骨へのカルシウム定着作用のあるビタミンKによる相乗効果で骨粗鬆症の予防にも。ちなみに春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)のスズナは、かぶの葉のことである。

小松菜は、我が家ではキサントフィル類の摂取に非常に重宝している。アスリートが重要視する両親媒性の抗酸化成分を多く含む野菜だ。キサントフィル類は各種ハーブ類、赤パプリカやコマツナ、チンゲンサイ、ホウレンソウなど緑色の葉物野菜に豊富。小松菜は特にキサントフィル類のルテインが豊富。ルテインは目の黄斑部の周辺に分布。リモートワークでパソコン作業、携帯利用が多くなった昨今、ルテインには有害なブルーライトを吸収する働きがあるとされ、活性酸素を取り除く抗酸化作用の役割を活用しながら網膜細胞を守る働きに期待。ルテインにはコントラスト感度を上げる作用も。

柚子と言えば冬至の柚子湯。血行を促進し、体を温める効果もあるので、柚子湯に入ると風邪をひかないとも。「一陽来復」の運を呼びこむ前に禊(みそぎ)として、柚子湯で身を清めるという意味や、冬が旬の柚子は香りも強く、強い香りのもとには邪気がおこらないという考え方もある。リズムや直感を徹底し、縁起やエネルギーを重宝するアスリート世界にいる我が家が大事にしている、日本が世界に誇れる柑橘である。2020年秋に資格取得をした、長島司の森の香り・里の香りコンシェルジュ。香り化学の世界では、他の柑橘類同様に、モノテルペン炭化水素のリモネンが圧倒的に多い。しかし実はこのリモネンは機能性は豊かだが香りを特徴づけるものではない。特徴的な柚子の香りは重要香気成分のユズノンやリナロール、酢酸ネリルなど、存在量が少ないながらも大きく関与する成分が担っている。また皮やワタの部分に含まれるナリンギン、ヘスペリジン成分が認知症予防に有効という研究もある。(糖代謝やエネルギー代謝改善)

春菊の香気成分に含まれるαピネンは森の香り成分。これも柑橘類にふんだんに含まれるリモネン同様、モノテルペン炭化水素でαピネン自体が香る訳ではなく、他の香気成分をリフトアップさせる重要な役割を持つ。αピネンの生理作用として、免疫増強やストレス緩和など自律神経を整えられること。明太子に豊富に含まれているナイアシン=ナイアシンアミド(ニコチンアミド)とナイアシン(ニコチン酸)の総称。ナイアシンはビタミンB3と呼ばれていたビタミンB群の仲間で、水に溶ける(水溶性)ビタミン。ナイアシンの注目作用は、うつ、幻覚症状、イライラ、不安、精神障害などの神経症状を和らげることが言われるため、コロナ禍では食材の香気成分と共に意識しながら摂取していきたい栄養素である。春菊はβカロテン、食物繊維、ビタミンB1やB2、C、Eなどのビタミン、カルシウム、鉄、カリウムなどのミネラルもバランスよく含まれる。

白菜は芯にカリウムなどのミネラルが豊富。よって成長点のある中心部から外側に向かって食べると栄養を効率良く摂取できる。加えて固い芯も細くスライスすればみずみずしい食感で美味しくいただける。芯も全て使って欲しい。ちなみに外側の葉の部分にビタミンCが豊富。アブラナ科の野菜はうま味もふんだんだ。

漢方薬の葛根湯の原料にもなる葛は秋の七草の一つでもあり、美しい紫色の花をつけるマメ科の植物。この根の部分から採れた澱粉が葛粉。体を温める効果や解熱、発汗作用があり風邪の引き始めに飲むと効果的。また葛湯に含まれる「でんぷん」は消化・吸収が良く、整腸作用がある為、胃腸が弱っている時でも安心して飲むことが出来る。葛には大豆と同じく女性ホルモン様のあるイソフラボンに抗酸化作用が、抗菌効果(葛湯・葛茶には病原菌を抑制する力があるとも)肩こりにも○本葛にした場合、フラボノイド類(ホルモン補助、神経系の安定に作用)とサポニン類(肝臓機能の向上、血圧調節に作用)が摂取出来る。

2020年1月11日に聴講したばかりの日本メディカルハーブ協会第二回学術フォーラムin東京 門脇真氏/薬学博士 富山大学名誉教授『メディカルハーブによる食物アレルギー体質の改善効果について』では、FAモデルマウスを用いて漢方薬・葛根湯が腸管にTregを効率的に誘導してFAの発症を抑制することを明らかにした。(Nagata Y., Yamamoto T., Kadowaki M.et al. PLoS One. 2017)。さらに、葛根湯によるTreg誘導には葛根の成分であるプエラリンが関与する事、その作用機序として、食品由来成分でもあるプエラリンが、Treg誘導を促進するレチノイン酸の産生代謝を腸管特異的に制御して、レチノイン酸の機能を亢進させる事を明らかにしている。(Yamamoto T., Kadowaki M. et al. Biochem Biophys Res Commun. 2019)。

生の生姜に含まれるショウガオールは免疫細胞である白血球を増やして免疫力を高める。風邪やインフルエンザのウイルスに対し、感染源である鼻粘膜、口腔粘膜、眼瞼結膜などにおいて抗体産生能を増し、水際で感染を防止する作用を期待。生姜には胃腸の内壁の血行を良くして、胃腸の働きを活発にし、食べ物の消化吸収を高める作用も期待できる。

※動画内でかぶっている私の帽子はマヨ1グランプリの時のキユーピーさんのものをお借りしています。