内藤裕二先生腸内細菌セミナー
長寿研究で注目される酪酸菌
世界中の研究者たちが関心を寄せる腸内細菌。酪酸菌(酪酸産生菌)も注目されている菌の一つです。酪酸菌が作り出す酪酸は、大腸のエネルギー源として利用され大腸の正常な働きを支えていることは以前から知られていました。近年の研究の進歩によって、酪酸は免疫系や神経系、内分泌系などの全身の健康にも影響を与えることが報告されています。こうした酪酸の働きを解明する研究には、日本人の研究者たちも貢献してきました。世界的に長寿国として知られる日本では、長寿の秘訣を探る研究も行われています。そのなかで、酪酸菌が長寿にも関係していることが明らかになりつつあります。
長寿者の腸内フローラ
酪酸菌と長寿の関係について、研究で明らかになりつつあります。その一つが、京都府立医科大学が2017年からスタートさせた「京丹後長寿コホート研究」です。
京都府の北部に位置する京丹後市。この地域は、住民の人口に占める100歳以上の方(百寿者)の割合が全国平均の3.44倍と、際立って長寿者の多い地域です。男性の世界最高齢を記録し、116歳で亡くなった木村次郎右衛門さんも京丹後市で生まれ、生涯を過ごしました。
- 「京丹後長寿コホート研究」の一環として、京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授の内藤裕二先生は、京丹後市に住む65歳以上の人の腸内フローラを調査。比較対象として京都市に住む65歳以上の人の腸内フローラも調べました。その結果、京丹後市に住む人ではカラダにいい作用をもたらす細菌が多く属するファーミキューテス門の割合が高いことが判明。さらに、そのファーミキューテス門の構成を詳しく調べたところ、トップ4を占めたのはすべて酪酸菌だったのです。
- 京丹後市 vs 京都市:
腸内フローラ比較(門)
- 京丹後市では、京都市と比較して、プロテオバクテリア門、バクテロイデス門が少なく、ファーミキューテス門が多かった。
- 京丹後市 vs 京都市:
腸内フローラ比較(属)
- さらに京丹後市のファーミキューテス門の内の上位4つの菌はすべてクロストリジウム菌という酪酸菌だった。
長寿地域に住む高齢者の腸内に多いことが判明した酪酸菌。単なる長生きではなく、健康で自立した生活を送れる「健康寿命」を延ばすことが重要視されるなか、酪酸菌の注目度はますます高まっていくと考えられます。
酪酸菌を増やすには?
ここまで酪酸菌が長寿のカギを握る細菌であることをお伝えしてきました。酪酸菌が作り出す「酪酸」は大腸のエネルギー源となり、大腸の正常な働きを支える働きがあります。そんな私たちの健康に貢献する酪酸を作り出すことができる腸内細菌「酪酸菌」。体内の酪酸を増やすには、酪酸菌の働きを促し、腸内の酪酸菌を増やしていくことが重要となります。ここからは、体内の酪酸菌を増やす方法についてご紹介します。
食事
酪酸菌を含む食品はほとんどなく、食事から酪酸菌を摂るのは難しいのが現状です。しかし、体内の酪酸菌を増やすために有用な方法の一つに食事があります。食事を工夫することで腸内の酪酸菌を育てることができるためです。酪酸菌は、腸内細菌のエサとなる食物繊維を摂ることによって育てることができます。食物繊維は大きく分けると水溶性と不溶性があり、特に腸内細菌のエサになりやすい水溶性食物繊維を意識して摂ることが大切です。
水溶性食物繊維は海藻類や果物類、不溶性食物繊維は穀類や豆類に多く含まれています。例えば、わかめや昆布、大豆、サツマイモなどが挙げられます。さらに、いま特に注目されているのが、食物繊維のなかでも腸内でより発酵しやすく、有用菌のエサになりやすい「発酵性食物繊維」です。これは、水溶性食物繊維の多くと不溶性食物繊維の一部を指し、代表的な食材として、大麦や小麦全粒粉、玄米、根菜類、大豆製品などがあります。
なお、食物繊維の1日あたりの摂取量の目安は、成人男性が21g以上、成人女性が18g以上(18~64歳)です。しかし、バランスの良い食生活を継続するのは難しいもの。酪酸菌が配合された整腸剤を活用していくのも良いかもしれません。
発酵性食物繊維を栄養源として、短鎖脂肪酸(第1回コラム参考)を産生し、腸内細菌叢のバランスを良い状態に保ちます。発酵性食物繊維を多く含む代表的な食材は、大麦や小麦全粒粉などの穀類、野菜類、果物類、海藻類、豆類などです(表1)。
運動
運動習慣の改善も腸内の酪酸菌を増やすのに有用な方法の一つです。ある研究によると(下図)*1、息が上がるようなやや強度の高い運動を30~60分間、週に3回を6週間続けて行うことで、BMIにかかわらず酪酸菌の割合が増加し、この効果は普通体重、やせ型の人でより顕著だったと報告されています。運動期間後は酪酸菌の割合が減ってしまうとの報告もされているので、継続して運動することも酪酸菌を増やすためには重要そうです。
運動前・中・後の5つの酪酸菌の増減(BMI25未満の群とBMI30以上群の比較)
- # 運動ありまたは、運動なしの主な効果(p<0.05)
平均±標準誤差
*1 Med Sci Sports Exerc. 2018 Apr;50(4):747-757.
エリカ先生講義メモアップ
本日、早朝より受講開始致しました🙇♀️今からちょうど18年前の2005年〜2007年にかけ、アロマテラピーインストラクター(講師資格)を取得する為に通学していた、ニールズヤードレメディーズ横浜山手分校、そして、長らく通学していた、当時、クイーンズイーストにあったニールズヤードレメディーズ横浜みなとみらい校。(セラピスト、トレーナー等の施術技術関しては、私はプレミナセラピストスクール東京代官山校を卒業。試験を受けスポーツアロマトレーナーの資格を取得しています)そんなニールズヤードのオンライン講義情報です。受講予定。担当講師:エリカ・アンギャル
カリキュラム
1回目
・栄養をめぐる神話
・神経系の障害、生理痛などのホルモンの問題、疲労などの慢性的な健康状態の多くを引き起こす、健康と活力の敵である主な食の罠について
・健康トラップ/健康・美容・活力の敵
・食品のラベルを理解
・超加工食品がもたらす私たちの健康、活力、ホルモンへの影響
・コストについて考える
・医師のアドバイスについて考える
2回目
・一人ひとりに最適な、理想の食事を見つけるには?
・日本人の平均的な食事と欧米人の平均的な食事比較
・一汁三菜を作ることが難しい忙しい女性へいくつかの近道
・2週間の食日記
・腸と脳のつながりについて
・リーキーガット・腸管透過性と炎症の引き金、アレルギーや食物過敏症の増加について
・マグネシウム不足の要因
・人は何故こんなにも疲れているのか
・肝臓をサポートするための食品と戦略
・サプリメントについて
3回目
・マインドセット
・ポジティブな考え方を持つスキルを学ぶ
・ネガティブな経路の配線を変える方法
・自信、自尊心、より前向きな見通しを改善するための基礎となる実践的なエクササイズ、ツール、ヒント
カリキュラムは途中で変更になることがございます。予めご了承ください。
講師
◇エリカ・アンギャル Erica Angyal
栄養コンサルタント
2004年から8年間ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントとして、知花くらら(2006年世界2位)、森理世(2007年世界1位)をはじめ、世界一の美女を目指すファイナリストたちに「美しくなる食生活」を指南。栄養学、薬理学、生理学など予防医学における幅広い専門知識を駆使し、“内側からより美しく、心も身体もすこやかに輝く”をテーマに、ハッピーな毎日のため食とライフスタイルを発信している。
■略歴
1969年オーストラリア・シドニー生まれ。シドニー工科大学卒業、健康科学学士。ネイチャーケアカレッジ卒業(栄養学)。血液型と体質の個人差を研究するThe Institute for Human Individuality(IfHI)のフェロー(研究員)の資格を持つ。オーストラリアで医師とともに、アレルギーや自己免疫疾患、心臓病や糖尿病などの生活習慣病や、肌コンディションに悩む患者の治療に従事する。1985年に初来日し、大分の高校に1年間の交換留学。日本在住は今年2022年で計26年目。伝統的な和食と日本文化をこよなく愛す。日本女性の心に響くよう、磨き続けた日本語で、健康と美容に関する世界の新しい知識を紹介することに、深い情熱を注いでいる。
■主な活動
・海外向け英語番組「MEDICAL FRONITIERS」(NHK WORLD)プレゼンター(2015年〜現在)
・オーストラリアPR大使(オーストラリア政府観光局)(2011年〜現在)
・日本オーソモレキュラー医学会公式アンバサダー(2022年~現在)
・ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタント(2004年〜2012年)
・日本、オーストラリア、中国、台湾、韓国などの国と地域で著書や翻訳本を出版(2005年〜現在)
雑誌、新聞、ラジオに多数出演•世界健康フォーラム、女性医療フォーラム他、自治体やメディア、企業主催イベントに多数
■公式サイト www.erica-angyal.com
■フェイスブック エリカ・アンギャル / Erica Angyal
■インスタグラム www.instagram.com/erica.angyal
エリカ・アンギャル
2023年 7/1(土)~ 7/31(月)
*お申し込み締め切り日:2023年 6/29(金)まで
https://www.nealsyard.co.jp/school/food_innerbeauty/sp_erica_a.html
*途中入校受付:7/13(金)まで(お申込み日の翌日~3日以内に、視聴用URLをメールでお送りします)
#メディカルハーブ #植物学 #植物療法 #植物美容
エリカ先生メモ
第2回目
食べ物は最も強力な薬!(健康状態を維持し、美しく年齢を重ね、活力を生み出すための基盤。それは耐えものが遺伝子と通信し、全ての細胞に指令を送っているから。
ゴールをつける!ポジティブに美しく年齢を重ねること。
ライフスタイルは遺伝子よりもはるかに強い影響力がある(思考、食べ物、運動も含め)オフとオンの切り替え(エピジェティックス)
腸内細菌叢、DNAは人それぞれ。自分の体の研究者隣、自分に合った食事とライフスタイルを自ら試して見つけ出していく必要がある。
マイクロバイオーム:私たちの体はバクテリア、ウイルス、菌類、何兆個もの微生物の家 私たちの腸には少なくとも10000種の異なる微生物。最近では1000種の新しい微生物が発見。私たちは熱帯雨林である。
腸内細菌叢は100兆を超える微生物で構成。全ての病気は腸から始まります(ヒポクラテス)
ベンの移植で、歳をとったマウスが若々しくなる研究。腸内フローラのバランス、多様性がいかに大事か → リーキーガットは老化の加速に関与(アルツハイマーなども)
健康な腸と美しく歳を重ねるための3つの主な要因
1バクテリアと他の種の私物の耐用性とバランス
2健康な腸壁(1細胞の厚さ)
3腸壁の内側を覆う健康な粘液層(通過してはならないものをキャッチする役割)
超長寿研究→多様性(30歳に匹敵)ごぼう、山芋などの食物繊維(自家栽培)
50歳以上の多様性が減ってきている、加速度的な老化はバクテリアや微生物種の多様性とバランスの低下によるもの。
腸内細菌叢の微生物の多様性を高めるための4つの方法
1食物繊維(腸内フローラの成長を促進。増殖させ、短鎖脂肪酸を生成。若い世代の摂取が特に減っている。ほし昆布、わかめ、きな粉、胡麻、干し柿、ダークチョコなどが多い)
2発酵食品(腸内フローラにとってのスーパー肥料。腸内微生物の多様性を高め、炎症の兆候を減少。多くの発酵食品を食べれば食べるほど、腸内で開花、プラスの効果をもたらす微生物の数が多くなる。梅干し、味噌、納豆、鰹節、醤油、漬物、キムチ、米麹甘酒)
3ポリフェノールが豊富な食品(腸内細菌のためのスーパー肥料。スーパーヒーロー。いろとりどりの野菜や果物、大豆食品、穀物、ハーブ、スパイス、カカオ、オリーブ、緑茶、紅茶、コーヒー、赤ワインなど。ポリフェノールは善玉菌や善玉菌の増殖と多様性を促進。また、病原菌や悪玉菌に対する抗菌効果が示される。緑茶にフレッシュなローズマリーやオレガノをイン。注目はざくろ)
4多種多様なホールフード(異なる食べ物を30種類食べる人、30種類食べる人、微生物叢の多様性が高かった。同じものを食べない。和食は多種多様な食材と水位線種類の栄養素がバランスよく含まれる。たんぱく質、良い脂肪、炭水化物、食物繊維、微量栄養素など)
腸内環境を優先的に大事にする!
伝統的な和食は30種類を奨励されていること。
◉日本食は何故素晴らしい?
一汁三菜は食材の多様性、何千もの栄養素を提供するバランス。
発酵食品と食物繊維は腸内細菌叢の全体的な多様性。
5色 少なくとも5色の異なる食材を食べると、さまざまな栄養素がとれる
調理法 煮る、蒸す、生のまま、水分を多く使用する料理法を多用。栄養素が壊れにくく、生成するAGE の量が減少
大豆製品、魚介類、塊茎、緑と黄色の野菜(漬物)果物、海藻、きのこ、緑茶が豊富
発酵調味料(醤油、味噌、酢、味醂、酒)と出汁を使い、塩や砂糖を大量に使わない
◉和食の秘密
血糖値やインスリンレベルの急上昇を防ぐ
たんぱく質、炭水化物、脂肪などの主要栄養素のバランスが良い
フィトケミカルと抗酸化成分が豊富
ビタミンやミネラルが豊富
プレバイオティクス、プロバイオティクス、発酵食品が豊富
アンチエイジングのミラクルホルモン「アディポネクチン」を増やす
和食の調理は糖化反応を抑制する
抗炎症作用が強い
→大豆製品(豆腐、味噌、枝豆、納豆)
イソフラボン=ダイゼイン、ゲニステイン 究極の生薬、私たちのホルモンと美しく年齢を重ねる素晴らしいスーパーフード。イソフラボンは皮膚の早期老化を防ぐ、癌のリスク低減、更年期症状を軽減、体内の炎症を抑える、血管の柔軟性を改善、強力な抗酸化物質
→味噌汁1日杯 4割減 味噌1日2杯 26%カット
イソフラボンは血中に8時間 一日中体で働いてくれる 女性ホルモンのような形もしてくれる。島豆腐、味噌
レシピ
具沢山味噌汁。たっぷりの季節野菜にツナ缶や卵をいれ、最後にオリーブ油。マグカップに味噌とお湯を入れてかき混ぜる。オリーブ油とすりごまをトッピング。玉ねぎやきのこ、ケールを豆腐と一緒に炒め、トーストにのせる。納豆とアボカドトースト。
◉魚介類
オメガ3 ミトコンドリアと脳のために、美しく歳をとるためのスーパー脂肪!ミトコンドリアを活性化。私たちの脳は60%が脂肪、脳の脂肪の約半分はDHA。オメガ3が最も高い人は最大の脳と最大の記憶領域を持っている。
オメガ3は無限の美容効果 皮膚の弾力性の維持を助ける 皮膚細胞に水分を閉じ込めて皮膚を内側から潤す、紫外線から肌を保護する、肌のバリア機能をサポート、皮膚の損傷の治癒を助ける。
レシピ
サーモンをグリルしてアボガドサルサをトッピング、ツナ缶を味噌汁や蒸し野菜、サラダにイン。サーモンの角切りやツナ缶とアボカドを丼に。手巻き寿司やおにぎり、サーモンやマグロを添えて。
◉きのこ
(腸内細菌の多様性を促進、免疫システムを強化、認知症のリスクを軽減する強力なプレバイオティクス。アルツハイマーのリスクがかなり下がる。エルゴチオネインは人気のある長寿栄養素、脳、記憶、認知機能をサポートする抗酸化物質、肌を保護をする役立つ)
スペルミジンは細胞の再生をサポートし、新しい脳細胞の成長を刺激して脳の老化を遅らせ、特定の癌を予防します。またオートファジーを誘発するのにも役立つ。大豆製品、納豆、しめじ、舞茸、平茸、米糠などには入っています。
レシピ
きのこをたくさん入れて具沢山のお味噌汁に。オムレツを作る時も。スクランブルエッグ豆腐に、きのこのキヌアリゾット
◉ごぼうや山芋などの芋類や、蓮根などの根菜類
腸内スーパーフード。イヌリンは消化を助け、腸の機能を改善し、腸内細菌叢の多様性をを促進するプレバイオティクス
◉海藻(のり、わかめ、ひじき、昆布、もずく)
マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのミネラルが豊富。茶色の海藻はフコキサンチン、フコイダンという化合物が豊富で、免疫システムを強化、腸内フローラの多様性を高めます
フコキサンチン
カロテノイドの一種、強力な抗酸化物質、抗炎症作用、抗癌作用も。血糖値を調節。
フコイダン(食物繊維)
腸内フローラのスーパーフードでもあり、免疫増強剤。抗ウイルス作用もあり、有益な腸内細菌の増殖を増加させることが明らかに。
野菜(フィトケミカル)
抗炎症作用、給食の美容食(カラフルなもの、カロテノイドを良質油と一緒に)
緑茶と抹茶は世界的にブレイク
奇跡のドリンク。緑茶に含まれるカテキンやテアニンのような化合物は、強力な抗酸化物質、抗炎症物質であり、ほぼすべてのがん、生活習慣病のリクを低減。紫外線によるダメージから肌を保護し、ストレスに対処するのに役立ちます。脳の老化を防ぎ、認知症のリスクを軽減。気分を高めることも明らかに。脳に入れることがわかっているEGCG
◉発酵食品
腸内フローラにとってスーパー肥料のようなもの。日本人は世界で最も洗練された発酵食文化を持っている。腸内細菌株の多様性は、寿命、免疫力と強く関連。
◉日本の柑橘(ゆず、すだち、かぼす)
ナリンゲニン、ヘスペレチン、ネオヘスペリジンなどの強力なフラボノイド抗酸化物質。強力な抗炎症作用、脳機能と記憶力を改善。コラーゲンの生成に不可欠なビタミンCも豊富。幹細胞の産生を刺激するのにも役立ちます。(脳に入る)
おにぎり、味噌汁
調理方法
煮る、蒸す、水分を多く使用する調理法は等価を減らせる。炎症反応が少ない 美しく年齢を重ねることができる。
⭕️地中海の食事
ダイエットは5000年の歴史。長寿、腸内細菌の多様性の向上、ホルモンバランス、体重減少、メタボやがん、糖尿病の低下、記憶力向上など 70年前から研究
オリーブオイルやオリーブ、豆類、穀類、ナッツ、シーフード、ハーブやスパイス、羊乳、ヤギのチーズ、適量のワイン、鶏肉と卵
エキストラバージンオリーブ油:40の違ったポリフェールが含まれている。強力な抗酸化物質。研究によると通常のオイルからオリーブ油に変換すると、肌のシワや肌の早期老化が減少。体内の炎症を劇的に軽減し、乳がんを含む多くの生活習慣病リスクを軽減することがわかっている。(食べる美容液)
ハーブとスパイスは強力な抗酸化物質、天然の抗炎症剤(ポリフェノール)
ジンジャー、ガーリック、ターメリック、バジル、オレガノ、タイム、ローズマリー。セージ、ディルなど。腸の多様性。
ナッツ
ピスタチオはミトコンドリアの強力な抗酸化物質。メラトニンが豊富(眠れる、ミトコンドリアの抗酸化)。そのほか、胡桃、アーモンド、ヘーゼルナッツなど。ビタミン、ミネラル、食物繊維、フィトケミカル、良質な志望の素晴らしい供給源。腸内フローラを改善する。
豆類
レンズ豆、ひよこ豆、白い豆、黒豆などは食物繊維、フィトケミカルが非常に豊富で腸のためのスーパーフード。
地中海と日本食のミックス
味噌とオリーブ油 相性が良い
夕食を抜き、週に複数回、脳の掃除。
健康的な飲み物
緑茶、ハーブテティー、コーヒー、レモン、ラムを絞った水、バルサミコ酢を加えたウォーター、レモンジンジャーティー
おすすめの油
えごま湯、亜麻仁油、アボカドオイル、未精製胡麻油、ギー、バター、MCTオイル、オリーブ油
将来の投資だと思い、頑張る。
美しく歳をとるためには?
ポジティブな思考、良い姿勢、バランスの取れた神経系、自己愛、自尊心、良質な睡眠、適切な明るさ、自然との触れ合い、ストレスを上手に利用すること、生きがい、楽しく体を動かすこと、デジタルライフ、バランス、セルフケア、趣味を楽しむこと
楽観的であること!心も栄養素 すべての思考はホルモンと神経化学物質を放出
ポジティブ思考はセロトニン、ドーパミン、オキシトシンを放出(死亡のリスクが優位に低い)
ネガティブはコルチゾール上昇、より不安や落ち込みを感じさせる。
ポジティブ思考は脳と皮膚の老化を遅らせ、炎症を抑え、免疫システムを強化し、テロメアの長さを伸ばし、寿命を延ばし、怪我や病気から回復させ、うつの発生率を低くし、問題解決力を向上させる
ネガティブを断ち切る努力を!トレーニングができる!スキル
朝起きた時にポジティブな考え方を!今日はいい日になる!今日は素晴らしい1日になる!
素敵なことが起こったら5感を使って味わう。感謝の気持ちにつながる。幸福度が上がる。
感情は伝染、鏡細胞があるから ミラーニューロン
瞑想が素晴らしい 不安の気持ちが減る アイマスク、リラックス、ガイドの瞑想 深呼吸を10分間
運動 筋肉の量が少ない 運動で筋肉を活性化させると、強力なアンチエイジング効果のあるマイオカインが放出
天然の抗炎症剤。1日3〜5分 スクワット10回 ジャンピングジャック10回 ランジ10回 腕立て10回 プランク30秒 その場でジョギング1分 朝の運動 有酸素運動をしないと毛細血管が死亡 ヨガ、ピラティス、ダンス、エアロビクス、朝一番のストレッチ リンパの刺激 つま先でジャンプ
上記シンポジウムを2021年4月15日にzoom聴講させていただくことが出来ました。日常生活にも生かせる有益情報の為、シェアさせていただきます。
緑茶は「養生の仙薬、延命の妙術」(喫茶養生記)として約800年間飲み続けられ、身体に良いとされる成分が豊富に含まれる美味しい飲み物。また、近年の研究でインフルエンザの予防効果が明らかとなっている。そこで、緑茶の新型コロナウイルス感染抑制に関する研究に取り組む研究者の方に研究成果を交えながら、緑茶の飲用が新型コロナウイルス感染抑制につながる可能性についてお話しいただいた。
内容
(1) 基調講演「緑茶のインフルエンザ予防効果に関する研究について」
講演者:静岡県公立大学法人 静岡県立大学健康支援センター長 山田 浩氏
(2) パネルディスカッション<講師>
テーマ
「緑茶の新型コロナウイルスに対する効果について」
パネリスト
京都府公立大学法人 京都府立医科大学 免疫学
教授 松田 修 氏
国立大学法人 京都大学ウイルス・再生医科学研究所感染症モデル研究センター
准教授 三浦 智行 氏
独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター
センター長 西村 秀一 氏
静岡県公立大学法人 静岡県立大学健康支援センター
センター長 山田 浩 氏
京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所
技師 北尾 悠樹 氏
コーディネーター
学校法人永守学園 京都先端科学大学バイオ環境学部
教授 藤井 孝夫 氏
静岡県立大学健康支援センター長・山田浩氏
体脂肪低減や口臭・虫歯予防など、さまざまな健康効果があるカテキン。中でも、コロナ禍で注目されているのが、カテキンの抗ウイルス効果。 これまでの基礎研究から、緑茶に含まれる茶カテキンがインフルエンザに対して抗ウイルス作用があるということがわかっている。
2021年4月15日に京都府宇治市で開催された「緑茶と健康シンポジウム」の基調講演「緑茶のインフルエンザ予防効果に関する研究について」でも、これまでの研究成果と今後の展望が語られた。
基調講演を行った静岡県立大学健康支援センター長・山田浩氏はこう話す。
「茶カテキンによるインフルエンザ予防の研究は、最初は緑茶うがいの民間研究から始まった。その後の臨床研究の結果、適度な緑茶飲用がインフルエンザ発症を減少させるということがわかった。また、インフルエンザ以外の急性上気道炎を引き起こすウイルスに対する緑茶の効能も、徐々に検討され始めている」(山田氏)
●緑茶の飲用が新型コロナ感染症の予防につながる可能性も
山田氏によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)もインフルエンザと同じ、上気道感染症とのこと。 どちらもRNAウイルスであり、接触感染や飛沫感染で広がる点など、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)には共通点が多いため、茶カテキンが新型コロナウイルスに対して抗ウイルス作用を示す可能性が高いとのこと。
「これまでの基礎研究で、カテキンの一種、エピガロカテキンガレート(EGCG)にはインフルエンザウイルスが細胞と結合するのを阻止すると同時に、細胞内でのウイルスの増殖を阻害する作用があることが報告されています。そして、2019年12月から感染拡大が続いている新型コロナウイルスに対しても、カテキンのウイルス増殖抑制効果があるのではないか、と期待されているのです」(山田氏)
新型コロナウイルスの治療薬やワクチンなどの開発・使用がまだまだ限定的な今、山田氏の他にもさまざまな研究者たちが「日常的に摂取する緑茶が何か補助的な使い方ができないか」と、緑茶の飲用が新型コロナウイルス感染抑制につながる可能性を模索。
「緑茶の新型コロナウイルスに対する効果について」のパネルディスカッションでは、疑似ウイルスによる中和試験の結果やカテキン類によるウイルス不活性化のメカニズムなど、5人の研究者が最新の研究データを紹介しながら、興味深い意見が交わされた。
【お茶1杯あたりのカテキン量は煎茶より抹茶が多い】
●京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所 北尾悠樹氏
「緑茶と健康シンポジウム」では、新型コロナウイルス関連の発表だけではなく、緑茶の成分についての発表も行われ、改めて日常生活での緑茶の持つ有効性や効果的な摂り方などの発見があった。
京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所の北尾悠樹氏によると、緑茶には主に下記のような成分が含まれている。
緑茶の主な成分
カテキン類(EGCGなど):抗ウイルス効果
テアニン:リラックス効果
アルギニン:疲労回復効果
ポリアミン:アンチエイジング効果
「お茶の種類によって、含まれる成分や量は変わります。今日の発表では、カテキンの抗ウイルス効果に関連して、エピガロカテキンガレート(EGCG)についてのデータが多く発表されましたが、EGCGは煎茶の茶葉に多く含まれることがわかっている。
ただ、茶葉から抽出して飲む煎茶の場合、抽出の仕方にもよりますが、茶殻にもカテキンが5割以上残ってしまうため、1杯のお茶で比較すると、茶葉を丸ごと摂取する抹茶の方がEGCGを多く取り込むことができます」(北尾氏)
注目2種
エピガロカテキン:EPG(免疫細胞マクロファージを活性化。低温で多く抽出。アミノ酸類のテアニンは水出しで多く溶け出す)
エピガロカテキンガレート:EGCG(ウィルス表面突起結合。粘膜細胞に吸着出来なくして予防。70°Cから80°Cで抽出)
エビデンス(科学的根拠)は、緑茶(煎茶)から80℃くらいで多く抽出されるエピガロカテキンガレート(EGCG)や紅茶から沸騰直前の95℃くらいで多く抽出されるテアフラビン(TF)は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス(SARS-CoV-2)のように、プラス鎖一本鎖RNAタイプのウイルスに対して、複数の部位で抗ウイルス活性を示すことが明らかにした。(Phytomedicine, 2020)。
【茶のカテキン、多彩な機能性】
お茶の機能性については、一般的にもかなり認知され、さまざまな機能性研究が各方面で進められている。山田氏がお茶の機能性について最初に研究成果をあげたものは「茶カテキンの吸入(ネブライザー)で、喀痰中のMRSAが減少する」という臨床試験であったという(2004年)。
緑茶には、カテキン、カフェイン、多糖類、フッ素、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、γアミノ酪酸、フラボノイド類、テアニンなど、豊富な栄養や機能性成分が含まれる。中でも代表的な成分がカテキンで、がん抑制、抗酸化、血中コレステロールの上昇抑制、血圧の上昇抑制、血糖値の上昇抑制、抗菌、抗アレルギー、免疫不活などが認められている。また、緑茶に含まれるテアニンのストレスの抑制効果などもよく知られる。
近年「抗炎症・抗アレルギー作用」が注目
茶カテキンはポリフェノールに分類されるが、機能性として近年注目されているものに「抗炎症・抗アレルギー作用」があると、山田氏。代表的な研究成果としては「メチル化カテキンがIgE受容体の発現やヒスタミン放出を抑制し、通年・季節性アレルギー性鼻炎の症状を緩和する」というものがある。基礎研究の段階だが、茶カテキンには免疫賦活作用があることも確認されている。一例として「茶カテキン抽出物0.02%を7ヶ月摂取することでNK細胞活性増強と高齢促進マウスの癌転移抑制」といった試験がある。また「ポリフェノール強化シリアル(茶カテキン10mg/100g食餌)5週間でNK細胞活性、サイトカイン値の上昇」などの試験データもある。
【自然免疫の活性に関する研究報告】
中田氏らの静岡県立大学で静岡市在住の65歳以上の高齢者を対象に2017年5月、市販の茶カテキン飲料(総カテキン540mg/350ml)を2週間毎日摂取してもらった。2週間後に採血し分析を行なったところ、自然免疫の中でもNK細胞の活性と増加が認められたという。これまで、茶カテキンは病原微生物である細菌やウイルスに対して直接的な殺菌や増殖抑制作用があることが報告されていた。しかし、近年は、「抗炎症・抗アレルギー作用」を中心に免疫賦活、特に自然免疫の活性に関する研究報告が増えている、と山田氏。
【高齢者に有意な罹患率低下】
また、感染症の中では、インフルエンザ予防における緑茶及び緑茶成分の効果を検討した臨床研究が複数存在しているが、緑茶成分のサプリメントの摂取により細胞性免疫に関わるγδT細胞の増殖を促進することが報告されている。一方、茶成分でうがいをすることでインフルエンザ感染を予防できるかを研究した結果では、高齢者においては有意な罹患率低下を認めることができた。
しかし、成人や高校生の場合、プラセボ群と比較して罹患の減少傾向は見られるものの、有意差までは認められず、サプリメント形態とは違った結果になっているため、おそらく濃度や量の問題なのではないか、と山田氏。実際、うがいよりも緑茶飲用の方が、小学生、中学生、成人のいずれでもインフルエンザ感染予防に有為な関連性が見られたという。
【EGCGに創薬の可能性】
いずれにせよ、茶カテキンには殺菌作用や抗ウイルス作用だけでなく、抗炎症と免疫賦活作用が確認されている。これはまさに今市場ニーズの高まっている免疫力活性とマッチしたもの。現在拡大している新型コロナウイルスについて茶カテキンによる臨床的な効果について明らかにされていないが、創薬開発の基礎段階で用いられる「分子ドッキング法」におけるスクリーニング解析では、茶カテキンの中でも緑茶に最も多く含まれるEGCG(エピガロカテキンガレート)に創薬としての可能性が示されている。
今後の研究や臨床的な検証が待たれている段階、と現状について山田氏は報告した。
※緑茶と健康シンポジウムに引き続き、静岡県立大学薬学部山田浩教授と京都府立医科大学大学院医学研究科免疫学の松田修教授が登壇。(こちらも視聴させていただきました)
伊藤園さんのYouTube
https://youtu.be/GsuptjXTOS8
にてアーカイブが配信されている。
「口腔の健康状態が新型コロナ重症化に影響」 「新型コロナの一番の特徴は唾液にたくさん蓄積」
口腔ケアに効果的なお茶の含み飲みを紹介 伊藤園健康フォーラム
伊藤園は「第4回 伊藤園健康フォーラム」をオンライン開催し「感染症時代におけるお茶の効用」をテーマに専門家を招き講演・パネルディスカッションを実施した中で、口腔ケアに効果的なお茶の含み飲みを紹介した。
《参考》「第4回 伊藤園健康フォーラム」
お茶でうがいをすると歯周病菌の値が減少する可能性があることが報告されている。
静岡県立大学短期大学部歯科衛生学科(小児歯科専門医指導医)の仲井雪絵教授は「昨年、歯周病を患っている人は新型コロナウイルスによって亡くなる確率が極めて高く、集中治療室に入る確率も極めて高かった。口腔の健康状態が新型コロナウイルスの重症化にもかなり影響していることがだんだん分かってきている」と指摘する。
京都府立医科大学大学院医学研究科免疫学の松田修教授は「新型コロナウイルスの一番の特徴は唾液の中にウイルスがたくさん蓄積し、会話を通じて人から人へ伝播していく点にある」と語る。
松田教授は、試験管内にある健常者の唾液でお茶に含まれるカテキン類が新型コロナウイルスを不活化することも改めて紹介。「(カテキン類が)新型コロナウイルスの表面にくっつき感染力を失わせることを報告している。なるべくお茶を口に含みながら飲んで、唾液の中のウイルスを不活化することができれば、お互いに広めないということによって感染拡大を抑制できる」と説明する。
京都府立医科大学(学長:竹中 洋 所在地:京都府上京区)大学院医学研究科 免疫学 松田修教授らの研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 以下 ウイルス)感染症の拡大が続く中、感染者の唾液中のウイルスを不活化できれば飛沫を通じた感染の抑制に効果的であろうと考え、食品成分によるウイルス抑制の研究・試験を開始しました。その結果、お茶に含まれるカテキン類(※1)(以下 茶カテキン類)がウイルスを不活化する(感染能力を失わせる)ことを見出し、その後株式会社伊藤園(社長:本庄大介本社:東京都渋谷区)中央研究所との共同研究を開始しました。
その結果、茶カテキン類がウイルスのスパイクたんぱくに結合し、細胞への感染能力を低下させる効果などを確認しました。また、試験管内でヒト唾液中に加えたウイルスに対しても、茶カテキン類による迅速かつ効果的な不活化がみとめられました。これらの結果を報告した2報の論文が、この度6月8日(火)および11日(金)にそれぞれ、「Pathogens」と「Molecules」(※2)に掲載されましたのでお知らせします。
茶カテキン類は、茶類に高濃度に含まれます。しかし茶類を経口摂取しても血液中への移行は少なく、特に重合したカテキン類はほとんど吸収されません。そこでお茶を飲んでも、消化管から吸収されたカテキン類が全身的に作用する効果は期待しにくいと考えられます。一方で、お茶を口中に含んだ時に、口腔内で唾液中のウイルスが茶カテキン類によって不活化される効果は期待できると考えられます。それゆえ、多くの人がお茶を飲めば、唾液中のウイルスが不活化されることによって飛沫感染が減少し、人集団全体としてはウイルスの感染拡大を減弱させられる可能性は考えられます。たとえば飲食店などで、マスクを外したら会話する前にまずお茶を含み飲みする(10秒間程度口腔内全体にお茶を行き渡らせてから飲む)、といった行動を多くの人がとれば、症状のない感染者から周りの人への感染が減らせるかもしれません。つまり、お互いに他人のためにお茶を飲むという、「公衆衛生的な」使い方は有効な可能性があります。
現状ではあくまで可能性であり、患者さんにご協力をいただいてヒトでの試験を行わなければ、試験管内の実験だけでははっきりしたことは言えません。現在、感染者がお茶を飲むと口腔内でお茶がウイルスにどのように影響するかについて検証する臨床研究を行っています。今後引き続き研究に取り組んでいく予定です。
なお、今回の論文で使用した新型コロナウイルスは変異型ではないウイルスであり、B.1.1.7型(イギリス型)やP1型(ブラジル型)変異ウイルスにおける効果を検証したものではありません。EGCGはブラジル型には効果があるがイギリス型の一部には効果が低いという結果を得ていますが、これらについては現在研究を進めており、論文発表に向けて準備を進めています。
(※1)お茶に含まれる茶カテキン類
「エピガロカテキンガレート(EGCG)」「テアフラビン3、3′-O-ジガレート(TFDG)」などのほか、カテキン誘導体の「テアシネンシンA(TSA)」などのこと。
論文情報
論文1 論文名:(日本語タイトル)Significant Inactivation of SARS-CoV-2 In Vitro by a Green Tea Catechin, a Catechin-Derivative, and Black Tea Galloylated Theaflavins(緑茶カテキン、カテキン誘導体、および紅茶ガレート型テアフラビンによる新型コロナウイルスの試験管内での有意な不活化)
掲載雑誌:Molecules
掲載日時:6月11日(金)
著者:扇谷えり子、新屋政春、一谷正己、小林 誠、瀧原孝宣、河本昌也、衣笠 仁、松田 修
論文2 論文名:(日本語タイトル)Rapid Inactivation In Vitro of SARS-CoV-2 in Saliva by Black Tea and Green Tea(紅茶と緑茶による唾液中の新型コロナウイルスの試験管内での迅速な不活化)
掲載雑誌:Pathogens
掲載日時:6月8日(火)
著者:扇谷えり子、新屋政春、一谷正己、小林 誠、瀧原孝宣、河本昌也、衣笠 仁、松田 修
(※2)「Pathogens」スイスのMDPI社から出版されている、病原微生物に関する査読付き科学ジャーナル。
「Molecules」同じくMDPI社から出版されている、分子に関する査読付き科学ジャーナル。
静岡県はこのほど、緑茶成分の新型コロナウイルス不活性化について考えるシンポジウムをオンラインで開いた。京都府立医科大大学院の松田修教授が伊藤園と共同でカテキン成分によるウイルスの不活性化を確認した研究成果を解説した。
コロナウイルスと唾液が入った試験管内に緑茶、紅茶、ほうじ茶を加えると、10秒後に「ゼロに近い形」までウイルスが不活化したという。「他人と接する際にお茶を飲むことで、感染を抑制できる可能性がある」と期待を示した。
県茶業研究センター(菊川市)の松浦英之研究統括官は各国で進む研究事例を紹介。自宅療養するコロナ感染者10人に緑茶成分を経口などで投与した結果、回復が早まったとするイタリアの事例に触れて、「臨床研究や疫学調査による検証に期待したい」と話した。
茶殻
緑茶の栄養にはビタミンCや水溶性の食物繊維、カテキン、カフェイン、テアニンなどの水溶性だけでなく、茶殻にベータカロテン やビタミンE、胃の働きを整え殺菌作用を持つクロロフィルなど脂溶性ビタミンや脂溶性の食物繊維、鉄、亜鉛、カリウムなどのミネラルが残っている。日本茶研究の第一人者である農学博士の大森正司先生は著書『日本茶インストラクターに学ぶお茶の本』の中で、「大さじ1杯の茶葉(乾燥した状態)を食べると一日分のカテキンを摂ることができる」と話す。
※栄養成分としていただけるだけでなく、今回のレシピは牡蠣の亜鉛イオノフォアとして使用した。(EGCG)代用するならケルセチン(玉葱、りんごなど)
緑茶成分「テアニン」の脳機能への影響
例えば朝食の有無と「集中力」の関係もよく知られる研究の一つで、朝食を食べている子どもや学生の方が集中力が高い傾向にあり、テストの点数なども高い傾向にあることはよく知られている。最近は朝食に何を食べると良いかまで研究されており、朝食の内容がお茶漬けとステーキでは当然脳の神経物質への影響は異なり、特に40代以降は朝食で炭水化物過多になると集中力や注意力が低下するということも示唆されている。このような研究が進む中で、心身のリラクゼーションに関与する成分として知られる緑茶成分「テアニン」の脳機能への影響について研究を重ねた、と横越氏。
テアニンとは緑茶の旨味成分として知られるアミノ酸の一種で、良いお茶ほどテアニンの含有量が多い。テアニンが腸で吸収されるのかをマウスで調べたところ、投与濃度依存的にわずか10分でテアニンは血液や肝臓等に取り込まれることが確認された。
テアニン、脳内に取り込まれる
また、テアニンが脳関門を介して脳内に取り込まれるかを調べたところ、やはり投与濃度依存的に脳にも取り込まれることがわかった。脳にテアニンが取り込まれたラットの脳の神経伝達物質の変化を確認したところ、ドーパミン放出量が増え、セロトニン量が減っていた。さらに、脳波にα波がわずか20分で出て、40分もすると顕著に放出が促進されることも観察された。
また、イライラや集中力の欠如が問題となる女性特有の疾病の一つであるPMS(月経前症候群)についてテアニンが働きかけをしないか学生によるヒト試験を行った。その結果、緑茶テアニンの摂取により、PMSによる精神的な愁訴だけでなく、むくみや下腹部の痛み、頭痛といった身体的症状にも顕著な改善が見られることが確認できた。
他にもマウスへのテアニンの摂取でトーパミンが放出され、集中力の向上、学習記憶能力の向上、高血圧低下などが確認された。
「テアニン」の機能性表示食品も急増
緑茶には「テアニン」の他にも、「カテキン」という機能性成分が豊富に含まれており、その機能性もよく知られている。カテキンには「抗アレルギー作用」「抗炎症作用」「抗ウイルス作用」など身体に働きかける機能性が多い。
一方、テアニンには「ストレス軽減」「高血圧低下」「睡眠改善」「脳神経伝達物質の変動」など情動に働きかける機能性が多い。
これまでカテキン研究の方が進んでいるような印象があるが、緑茶のテアニンの「疲労回復」「ストレス解消」「記憶学習能力の向上」などにも注目が集まっており、テアニンを利用した機能性表示食品も急増している。
納豆菌の感染阻害を確認
水谷教授らのチームは、納豆菌のタンパク質分解酵素が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を分解し、感染を阻害することを確認したと、国際学術誌「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ」に発表しました。 水谷教授らは納豆の抽出液と新型コロナウイルスを混ぜ、ウイルスが細胞に感染するかどうか実験。納豆菌の持つ約80種類のタンパク質分解酵素がスパイクタンパク質を分解し、ウイルスは受容体と結合できなくなった。デルタ株など変異株も同様だった。新型コロナウイルスは表面にあるスパイクタンパク質がヒトの細胞の表面にある受容体に取り付いて感染します。 水谷教授は「納豆を食べて感染を防げるかはこれからですが、口の中に納豆があれば口腔(こうくう)内のウイルスは駆逐できます」と話していました。
納豆の抽出液が培養細胞への新型コロナウイルス感染を阻害する
納豆に含まれる成分に、新型コロナウイルスの感染を阻害する効果があることが確認されたとの実験結果を、東京農工大などの研究チームが7月13日付の国際学術誌「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ」電子版に発表した。チームは、食品に含まれる成分に抗ウイルス効果があることが直接確認できたのは極めて珍しいとしている。新型コロナは、ウイルス表面にあるとげ状の「スパイクたんぱく質」が、ヒトの細胞表面にある受容体たんぱく質「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)」に結合して感染する。大豆を発酵させて納豆を作る納豆菌は、腸内環境を整え、免疫力を高める効果があるとされる。そこでチームは、納豆菌が分泌するたんぱく質の分解酵素に着目。納豆の成分を取り出した抽出液と、中国で当初流行した新型コロナウイルスを試験管で混合させた上で培養細胞に加え、細胞への感染を防げるかどうかを調べた。その結果、抽出液の成分がウイルス表面のスパイクたんぱく質を分解してしまうため、細胞への感染を防げることが判明した。
一方、納豆に含まれるたんぱく質の分解酵素は加熱すると不活化するため、混合液に熱を加えると感染は防げなかった。このため、分解酵素がウイルス表面を壊し、細胞への感染を防いだとチームはみている。また、英国で初めて報告され、感染性が高いとされる「N501Y」変異株でも、同様にスパイクたんぱく質を分解する効果を確かめた。
https://mainichi.jp/articles/20210721/k00/00m/040/126000c
本研究は培養細胞を用いた実験であり、納豆を食べることによりウイルス感染を防ぐことができると示されたわけではない。しかし、これまで、このように食品の直接的抗ウイルス効果が示された例は少ない。納豆は我が国の伝統的な健康食品であり、これまでにも免疫力の増加や血栓の解消といった効果の報告があるが、非常時においても納豆をはじめとする伝統的食品の価値が再認識される結果となりそうだ。
納豆
一粒一粒に栄養と旨味がぎっしり詰まる。胃腸を元気に働かせ消化を助ける高酵素食品。酵素は納豆を始め味噌などの発酵食品に含まれており、生の野菜や果物などの食べ物から食物酵素をしっかり取り入れることで消化を助ける。納豆はアミラーゼなどの食物酵素を含んでいる。ナットウキナーゼは血栓を溶かす作用も。カルシウムマグネシウムのバランスが良い食材。納豆は微生物の中でも超強力な増殖力を持ち、体内に取り入れると腸内細菌のコンディションを上げる。セロトニンは腸内細菌によって作られており、食物繊維によって腸内細菌を整えていく。納豆は食物繊維も豊富な上、レシチン、コリンといった栄養素は脳の司令塔、前頭前野に働きかける栄養を含むメンタルヘルスにもオススメな食材。ビタミンKも含むので骨強化にも○。免疫に密接な関係性のある亜鉛補給にも○。整腸作用、感染症、免疫力、解毒、抗菌(納豆菌)血栓予防(ナットウキナーゼ)骨折、コロナ症状緩和の可能性も=ロッテルダム心臓研究によると天然ビタミンK2を豊富に含む食材を長年食す人は動脈内のカルシウム沈下が著しく低く、心臓血管の健康状態が良好。オランダではナイメーヘン市の病院で医師たちがビタミンKの欠乏と症状悪化の関連性を発見。新型コロナウィルスは血液凝固を引き起こし、肺の弾性繊維を分解するがビタミンKが凝固を調節。肺疾患から保護するタンパク質の生産に関わる。(ビタミンK2)更年期(大豆イソフラボン)アンチエイジング(スペルミン=ポリミアンの一種)セロトニン材料(トリプトファン)
納豆に多く現在特に世界で話題になっているのが生理活性の高いK2。動脈硬化の一因である血管石灰化や2型糖尿病、前立腺がんなどのリスクを下げるといった研究報告が相次いでいるのです。そして2020年には、新型コロナ感染症にかかった135人と健常者184人を比較したところ、感染者でビタミンK2の血中濃度が低く、重症度が高い人ではさらに低い傾向にあったというオランダの研究が発表され、注目度が上がりました。今のところ、これはK2が持つ肺損傷・血栓形成を防ぐ作用によるものではないかと考えられている。
細胞の若さを維持するための再生システム「オートファジー」を促す、スペルミジンという有機化合物がある。すべての生物の体内で作られるが、残念なことに老化とともに生成量は減っていく。今、この物質を補給することが、心血管疾患やがんによる死亡リスクを低下させて、健康寿命の延伸に役立つ可能性があるとして、老化制御研究者の熱い視線を浴びている。食品の発酵プロセスで作られ、多くとっても副作用がないというのも理由の一つ。
2014年に米国国立老化研究所(NIA)が「寿命延伸に役立つと考えられる七つの方法の一つ」としてスペルミジンを評価、その後も多くの研究が発表されている。そして、こうした研究でほぼ必ず、スペルミジンを多く含む食品の代表として引き合いに出されるのが納豆。東京都健康安全研究センターによる分析でも、赤ワインで0.16、白味噌で14.4、濃い口しょうゆで12.1なのに対し、通常の納豆で平均56.1、ひきわり納豆では75.2(単位は㎍/g)と、飛び抜けた量のスペルミジンが検出される。2018年に著名な学術誌『Science』(下記)に、スペルミジンが健康寿命の維持に役立つ仕組みからこれまでの研究までをまとめた論文が掲載。この中でも、スペルミジンの減少を補える食品として納豆が挙げられ、1日50~100g(1~2パック)の納豆をとった人で、血中のスペルミジン濃度が大幅に増加した、と記されている。
アピゲニンやクェルセチンなどのフラボノイドは、様々な機能を有することで知られています。植物中では、フラボノイドは様々な糖が結合した配糖体として存在しています。このフラボノイド配糖体は、消化管管腔で加水分解を受けてアグリコンになり吸収されますが、結合する糖の種類により加水分解を受ける場所、すなわち吸収する部位が異なることが明らかになっています。また、フラボノイドの代謝における抱合化や腸肝循環など興味深い報告も相次いでいます。さて、腸内のビフィズス菌などの有用菌は食物繊維やオリゴ糖を資化して様々な恩恵をもたらしますが、その一方でフラボノイドとビフィズス菌との相互作用が明らかになり、その結果としてフラボノイドがビフィズス菌の機能を高めていることが報告されています。今回のセミナーでは、こうした分野のお二人の専門家をお招きしてフラボノイドの吸収、代謝や腸内細菌との相互作用の最前線をレクチャーしていただきます。貴重な機会ですので皆様のご参加をお待ちしています。行事概要【参加費】JAMHA会員:2,000円/一般:3,000円/学生:無料【定員】300名【日時】2022年3月5日(日)13:00~17:00(事前申込者に限り1か月の録画配信あり)【会場】オンライン【申込締切】2月26日(金)15:00※申し込み締め切り後、ご案内のメールをお送りいたします。スケジュール13:00~13:10 JAMHAからの挨拶13:10~14:30 【Program 1】フラボノイドの健康機能と腸内フローラの関係/川畑 球一(甲南女子大学医療栄養学部)フラボノイドは、天然に約8 0 0 0種あるとされるポリフェノールの大きな一群であり、カテキンやイソフラボンを代表として特定保健用食品などに利用されている。フラボノイドは体内で健康機能を発揮する と考えられるが、フラボノイドの構造を保ったまま小腸から吸収される割合は摂取量の1割程度であり、 大部分は大腸で腸内フローラ(腸内細菌叢)による構造変化や低分子化を受けて体内に吸収される。すなわち、フラボノイドの健康機能は腸内フローラによって大きく影響を受けると考えられる。また、腸内フローラもフラボノイドによる影響を受け、菌叢バランスや代謝物の変化が生じることから、フラボノイドが腸内フローラを介して生体機能を調節している可能性も考えられる。このように、フラボノイドの健康機能は、腸内フローラが関わることで複雑なものとなっている。本講演では、フラボノイドと腸内フローラの相互作用について最近の知見を交えてご紹介したい。14:40~16:00 【Program 2】フラボノイドの吸収・代謝・機能性発現/室田 佳恵子(島根大学生物資源科学部)フラボノイドは植物性食品中に豊富に含まれており、様々な疾病に対する予防作用などが期待される機能性成分である。フラボノイドが摂取後に機能性を発揮するためには、期待する活性が吸収代謝後にも維持されており、標的部位において作用発揮に十分な濃度で存在することが必要である。フラボノイドは基本構造が異なると、吸収性に大きな違いが見られる。また、フラボノイドは植物中ではほとんどが配糖体として存在しているが、配糖体がそのまま体内に吸収される例はほとんど報告がない。配糖体は構造により、小腸粘膜で消化されて吸収されるものと、大腸まで到達し腸内細菌の作用によって分解された後に吸収されるものがある。いずれにおいても吸収後のフラボノイドの大部分は抱合代謝物として体内に存在するため、フラボノイドの機能性を考える際には、代謝による構造変化が活性や臓器蓄積に及ぼす影響を理解することが重要である。16:00~17:00 パネルディスカッション
機能性食品による上気道炎リスク低減・重症化予防についてのエビデンス
これまでの研究では、インフルエンザや普通感冒(風邪)の発症リスク低減や重症度軽減のために有用な機能性食品成分として、ビタミンD、エキナセア、ビタミンC、亜鉛の有用性が示されています。したがって、COVID-19の発症リスク低減や重症化予防にも、これらの成分が有用と考えられます。
1. ビタミンD:1,000 IU/日
ビタミンDは、自然免疫及び獲得免疫の両方において、免疫調節作用を示し、抗ウイルス作用を有しています。また、直接的なウイルス複製阻害から、免疫調節作用や抗炎症作用を介したメカニズムが知られています。
ビタミンDが不足していると、呼吸器疾患にかかりやすいことがわかっています。例えば、観察研究のメタ解析では、市中肺炎リスクとビタミンD低値の有意な相関が見出されました。また、14,108名を対象にした米国での横断研究では、ビタミンD欠乏が、急性ウイルス性呼吸器感染症への罹患リスクを高めることが示されています。日本で行われたランダム化比較試験では、冬期に学童に1日あたり1,200 IUのビタミンD3サプリメントを投与した結果、インフルエンザの罹患率が42%減少しました(PMID: 20219962)。
炎症性腸疾患において、ビタミンDサプリメントが風邪を予防するという臨床研究も知られています(PMID: 30601999)。
系統的レビューでは、ビタミンDサプリメントが小児の呼吸器感染症を予防することがわかっています(PMID: 31768940)。さらに、小児から高齢者まで、ウイルス性呼吸器感染症のリスクを減らすことが報告されています。
欧州20カ国でのビタミンD値と、COVID-19との関連を検証した研究では、ビタミンD値と、COVID-19の罹患率、死亡率との間に、有意な負の相関が検出されました。特に、スペイン、イタリア、スイスでは、高齢者でのビタミンDが顕著に低値であったことがわかっています。
英国での研究によると、ビタミンD欠乏症では、COVID-19の重症化リスクが高いと報告されています。具体的には、COVID-19感染による入院患者134名を対象に、血中ビタミンD値と、COVID-19重症度との関連を調べたところ、ビタミンD値が50nmol/L以上と充足していた患者の割合は、一般病棟では39.1%、集中治療室では19%でした。したがって、COVID-19の重症化リスクとして、ビタミンD欠乏が示唆されます(PMID: 32621392)。
英国の国民保健サービス(NHS)では、COVID-19に関する啓発の中で、外出抑制に伴う皮膚でのビタミンD合成低下に対する対策として、ビタミンDサプリメントの利用も考慮すべき、としています。
日本人の多くはビタミンD不足/欠乏であり、かつ、日本の食事摂取基準は、米国の半分以下に設定されています。ビタミンDサプリメントの摂取は必須です。標準的なビタミンD3製品の値段は、1,000 IU、30日分で300円ほどです。
2. エキナセア
エキナセア(エキナシア,学名Echinacea species,和名ムラサキバレンギク)は、北米原産のハーブで、免疫調節作用、抗ウイルス作用を有しており、多くの先行研究により、普通感冒やインフルエンザの罹患リスク低減や重症化予防が示されています。メカニズムは、抗ウイルス作用、免疫調節作用、抗炎症作用などです。
これまでに、次のような研究が知られています。
– インフルエンザに対してエキナセアはタミフルと同等の効果を示す
(PMID:26265958)。
– 風邪予防にエキナセアが有用:レビュー(PMID:26633727)
エキナセアでは、COVID-19での重症化のメカニズムとして注目されているサイトカイン・ストームを抑制して、呼吸器合併症を防ぐ働きも示唆されています。
症状の初期に多めに摂取する方法と、冬期を通じて、摂取する方法があります。標準的なエキナセア製品(Echinacea purpurea)の値段は、30日分で1,000円ほどです。
3. ビタミンC:1,000-2,000mg/日
ビタミンCは、抗酸化作用に加えて、免疫調節作用を有しており、非特異的な働きによるCOVID-19リスク低減作用が考えられます。これまでの多くの研究により、インターフェロン産生、Tリンパ球の形質転換、食細胞の機能といった免疫機能にビタミンCが関与することがわかっています。
ビタミンCによる風邪対策としての有用性も確立しています。これまでの臨床試験では、一貫して、ビタミンC投与による普通感冒(風邪)の罹病期間および重症度の軽減作用が見出されています。肺炎リスクに対するビタミンC投与の有用性も知られています。
具体的には、
– ビタミンCによる上気道感染症予防(PMID:21917705)
– ビタミンCサプリメントを追加すると風邪が早く治る:メタ解析
(PMID:30069463)
– ビタミンCが小児の風邪(上気道炎)の罹病期間を短縮:メタ解析
(PMID:30465062)
といった研究が知られています。
ビタミンCサプリメントによる風邪の罹病期間及び重症度への作用を検証した4つの臨床試験では、数百人の被験者において、罹病期間の短縮傾向は5%ほどでした。なお、そのうちの2報では、普通感冒のエピソードあたりの学校あるいは職場の欠席が14-21%減少したことから、臨床的には有意な効果と判断できます。
ビタミンCサプリメントによる介入試験3報では、肺炎リスクが80%以上、減少しました。英国において、平均年齢80歳の高齢入院患者57名(肺炎あるいは気管支炎の患者)を対象にした二重盲検ランダム化比較試験では、ビタミンC(200mg/日)投与による呼吸機能改善作用が報告されました。
ビタミンCサプリメントの効果が検出されやすいのは、食事からのビタミンC摂取量が少なく、ビタミンCが充足されていない被験者を対象にした場合です。しかし、ビタミンCの有用性は、一般健常者にもあてはめることができます。下気道炎(肺炎)を生じることがあるCOVID-19では、ビタミンCサプリメントによる補完的な作用が期待されます。
一般に、1日1g(1,000mg)以上のビタミンCサプリメントの習慣的な摂取により、普通感冒の罹病期間は顕著に短縮されます。
合成ビタミンCサプリメントとして、1日1g(1,000mg)から2g(2,000mg)を摂取します。標準的な合成ビタミンCの値段は、1g(1,000mg)、30日分で250円ほどです。
4. 亜鉛
亜鉛は、自然免疫と獲得免疫の両方の維持に重要なミネラルです。亜鉛不足は、液性免疫と細胞性免疫の両方の機能障害を生じ、感染性疾患への罹患リスクを高めます。亜鉛サプリメントを風邪の初期に投与することで、罹病期間の短縮効果が認められます。
亜鉛サプリメントの利用により亜鉛が充足されていることは、COVID-19の予防、および下痢や下気道炎といったCOVID-19の症状を軽減させる可能性があります。
5. オメガ3系必須脂肪酸
オメガ3系必須脂肪酸は、獲得免疫反応において重要な働きを有しています。また、α-リノレン酸、EPA、DHAは、それら自身および代謝物の抗炎症作用を介した多彩な機能性が知られています。
適度な量のオメガ3系必須脂肪酸摂取は、炎症惹起サイトカイン(IL-6)を減少させ、過度の免疫反応を抑制します。したがって、オメガ3系脂肪酸は、肺感染症におけるサイトカインの抑制や炎症性細胞の浸潤を抑制すると考えられます。
オメガ3必須脂肪酸に由来する抗炎症脂質として、レゾルビンやプロテクチンD1などが知られています。このうち、DHAに 由来するプロテクチン D1(PD1)は、RNA輸出機構を介してインフルエンザウイルスの複製を阻害することが知られています。また、重症インフルエンザモデルマウスにおいて、PD1投与が死亡率を低下させたという報告もあります。
まとめ
COVID-19予防のための機能性食品成分の働きを解説しました。
近年、国民健康・栄養調査では、若年層を中心に、ビタミン類やミネラル類の一部が摂取不足であることが示されています。また、高齢者では、消化吸収能の低下や免疫能の低下といった生理的変化が生じます。そこで、これらの解決方法として、ビタミンやミネラル、機能性食品成分を含むサプリメント・健康食品の補完的な利用が選択肢の一つとして考えられます。
COVID-19の高リスク群は、季節性インフルエンザと同様に、基礎疾患を有する場合や高齢者です。高リスク群に共通して顕著に不足しているビタミンは、ビタミンDです。近年の研究により、生活習慣病や慢性疾患でのビタミンD低値、高齢者の多くがビタミンD欠乏や不足であることが示されています。さらに、日本人の食事摂取基準2020年版では、ビタミンDの目安量が引き上げられましたが、それでも、米国等での基準の半分以下の水準です。なお、英国の国民保険サービス(NHS)では、COVID-19に関する啓発の中で、外出抑制に伴う皮膚でのビタミンD合成低下に対する対策として、ビタミンDサプリメントの利用も考慮すべき、としています。
今後も、COVID-19の対策は継続すると想定され、公衆衛生の視点から、SARS-CoV-2感染リスクに対する予防法およびCOVID-19の重症化予防として、セルフケアにおける機能性食品成分含有サプリメントの活用も選択肢と考えられます。
参考文献
ビタミンDが呼吸器感染症を予防
1. ビタミンD不足は呼吸器感染症のリスク
ビタミンDは、ウイルス性呼吸器感染症に対する自然免疫系の維持に必須です。これまでの多くの研究により、ビタミンDが不足/欠乏していると、急性ウイルス性呼吸器感染症や市中肺炎のリスクが上昇すると報告されています。
2. ビタミンDサプリメントとウイルス性呼吸器感染症
ビタミンDサプリメントが、実際にウイルス性呼吸器感染症の予防に有効という研究も報告されています。例えば米国では、長期療養施設の高齢者に、高用量のビタミンDを投与した結果、急性呼吸器感染症の発症が予防できました。また、乳児において、ビタミンDサプリメントによる肺炎(下気道炎)の予防効果も示されています。
3. インフルエンザを予防するビタミンDサプリメント
さらに、複数の臨床研究により、ビタミンDサプリメントの季節性インフルエンザ予防効果が示されています。
まず、国内からは、東京慈恵会医科大学による臨床試験が報告されています。この研究では、学童を対象に1日あたり1,200IU(30㎍;マイクログラム)のビタミンDサプリメント投与することによって、季節性インフルエンザ(A型)の発症リスクが42%減少しました。
また、海外での多施設共同ランダム化比較試験では、乳児に1,200IU(30㎍)のビタミンDが投与され、インフルエンザ症状からの早期の回復、ウイルス量の速やかな減少といった働きが示されました。さらに、1,300人を対象にした解析では、ビタミンDサプリメント投与により、インフルエンザを含むウイルス性呼吸器感染リスクが19%有意に減少したということです。
COVID-19とビタミンD
1. COVID-19の特徴とビタミンD
COVID-19では、炎症反応が亢進し、肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心不全、敗血症のリスクが高くなります。そして、心血管疾患や慢性呼吸器疾患、糖尿病、高血圧といった基礎疾患を有する人で、高い死亡率が示されています。また、これらの生活習慣病患者では、ビタミンDの不足や欠乏が多いこともわかっています。
2. ビタミンD低値はCOVID-19予後不良
さきほどビタミンD低値は、インフルエンザなどの感染リスクを高めると書きましたが、COVID-19の場合でも例外ではなく、やはり感染リスクや重症化リスクを高めます。
その報告として、まず欧州20カ国において、ビタミンD値と、COVID-19との関連を調べた研究があり、血中のビタミンD値が低いと、COVID-19の罹患・死亡率が高い、という相関が見出されました。特に、スペインやイタリア、スイスでは、高齢者においてビタミンD低値が顕著だったとのことです。
米国では、ビタミンD欠乏が認められたCOVID-19患者に、高用量のビタミンDを投与したところ、ビタミンD値の正常化、入院期間の短縮、必要酸素量の減少、炎症の改善といった臨床的な治療効果が報告されています。
また、英国からの報告では、COVID-19感染リスクについて、顕著な人種差が見出されています。具体的には、白人に比べて、黒人では感染リスクが5.32倍、南アジア人では2.65倍であったとのこと。そして別の研究では、白人に比べて黒人やアジア人は、ビタミンDレベルが低いことが知られています。
加えて、英国での別の研究によると、ビタミンD欠乏症では、COVID-19の重症化リスクが高いことが示されました。
さらに、COVID-19の予後不良群では、ビタミンDが低値であることもわかっています。具体的には、1,368人の新型コロナウイルス感染症患者を対象に解析が行われた結果、ビタミンD値は、予後良好の患者(669人)に比べて、予後不良の患者(634人)で低値でした。
このようなエビデンスの蓄積を基に、COVID-19対策として、公的機関がビタミンD摂取を推奨する流れも既に起こり始めています。例えば英国のNHS(国民保健サービス)では、COVID-19に関する啓発の中で、「外出抑制に伴う皮膚でのビタミンD合成低下に対する対策として、ビタミンDサプリメントの利用も考慮すべき」としています。
3. ウイルスの受容体とビタミンDの働き
では、ビタミンDの不足や欠乏が、なぜ、COVID-19の重症化や予後不良と関連するのでしょうか。その答を知るために、現在、COVID-19との関連が着目され研究が進められている、RAS(レニン-アンジオテンシン系)について、まず解説します。
新型コロナウイルス感染症の原因となるウイルス(SARS-CoV-2)は、気道の細胞表面に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合し、感染が成立します。ACE2は粘膜に発現しており、臓器・組織では、心臓、腎臓、腸、血管内皮細胞の他、肺(肺胞?型上皮細胞とマクロファージ)に存在します。
そのACE2は、炎症や血管収縮を抑える働きがあります。ところが、SARS-CoV-2がACE2と結合して細胞内に侵入する際、ACE2の働きが抑制されてしまいます。つまり、SARS-CoV-2感染により生じるACE2の減少が、肺や心血管系での病態の悪化に関連し、COVID-19が重症化する機序の一つと考えられています。
4. ビタミンDによるCOVID-19重症化抑制メカニズム
さて、それでは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とレニン-アンジオテンシン系(RAS)の関係に、ビタミンDがどのように関与するのかという話に進めます。実は、ビタミンDはRASの重要な調節因子であって、COVID-19の重症化リスク低減において、次のような働きをします。
まず、SARS-CoV-2がACE2に結合し、ACE2の働きが抑えられます。すると炎症が惹起されて肺血管攣縮などが生じ、COVID-19が重症化します。
これに対してビタミンDは、RASにおいてACE2発現を誘導し、ACEを介したアンジオテンシン?の産生を抑制することで、肺血管攣縮リスクを低下させます。さらにビタミンDは、アンジオテンシンの上流に位置するレニンにも働き、その活性を阻害することで、アンジオテンシンIIの産生をさらに減少させます。
つまり、ビタミンDは、新型コロナウイルスによるACE2活性の低下・ACE活性の上昇・アンジオテンシンII産生量の増加といった作用を抑えることで、肺血管攣縮を抑制し、COVID-19の重症化リスクを低下させる、というメカニズムです。
食事だけでビタミンDが摂れますか?
1. ビタミンD不足の現状
このようにCOVID-19対策としても注目されるビタミンDですが、その摂取量不足が、いま、世界的な課題になっています。この現状に対して、欧米の一部では、食品へのビタミンD強制添加を行い、課題を解決しています。
国内に目を向けても、日本人を対象にした多くの研究において、ビタミンDの不足や欠乏が高率に認められています。特に日本人の高齢女性は、ビタミンDが不足し、転倒リスクが高い状況にあることもわかっています。
2. ビタミンD状態の判定基準
ビタミンDが不足しているか否かといった栄養状態の評価は、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度[25(OH)D]の測定により行われます。一般に、25(OH)Dが30.0ng/mL以上を「充足」、20〜30ng/mLは「不足」、20ng/mL未満は「欠乏」と判定されます。
3. ビタミンDの食事摂取基準:日本は米国の半分以下
国内でもビタミンD不足に対する対策は始まっています。例えば厚生労働省が健康の保持・増進のために望ましい栄養摂取量として示している「日本人の食事摂取基準」の最新バージョンである2020年版では、ビタミンDの目安量が従来の5.5㎍から8.5㎍に引き上げられました。といっても、この値は米国の基準の半分以下の水準にとどまっています。また、日本では成人の基準は一律となっていますが、米国では、壮年期以降の世代は基準が高く設定されています。
4. 日光浴は非現実的
さて、既によく知られているように、高齢者はCOVID-19の重症化リスクが高くなります。そこで、高齢者では、特にビタミンDの充足が大切と言えます。
ビタミンDの供給源として、食事からの摂取と、日光浴による皮膚での合成という経路があります。
ただし、高齢者は、少食の傾向、および消化吸収能の低下などのために、食事からだけで十分な量のビタミンDを確実に摂ることは容易ではありません。また、毎日の食材のコストや調理の手間も考える必要があります。
さらに、日光浴も高齢者では、皮膚でのビタミンD合成能の低下、あるいは熱中症予防等のため外出頻度の減少といった影響があり、それほど当てにできません。「ビタミンDがCOVID-19対策として有用」と解説している情報の中には、食事と日光浴を勧める啓発も散見されますが、リアルワールドでのソリューション提供、臨床課題の解決という視点からは、適切とはいえません。
なお、英国の地域居住高齢者を対象にした臨床研究では、ビタミンDサプリメントの4,000IUと2,000IUが比較された結果、ビタミンD充足には、4,000IUが適切とされました。
5. ビタミンDサプリメントの用法・用量と安全性
ビタミンDのサプリメントの成分は、医療用医薬品として使われている活性型ビタミンD製剤とは異なり、その前駆体であるビタミンD3 (コレカルシフェロール)です。国内で市販されているビタミンDサプリメントの大半はビタミンD3 です。
そのビタミンDサプリメントの摂取量に関して、1日あたり2,000IU(50㎍)までは、特に問題となる副作用や有害事象は認められていません。骨代謝の改善、骨粗鬆症や転倒・骨折リスク低減のためには、少なくとも、800 IU (20㎍)が必要です。
一般に、健康増進・未病改善のためのビタミンDサプリメントの摂取量として、1日あたり800〜2,000 IU(20〜50㎍)が至適用量として推奨されています。店頭販売されているビタミンD含有サプリメントは、1粒あたり1,000IU(25㎍)の製品が多く、気になる値段は1,000 IU、30日分で300円ほど。
サプリメントや健康食品の多くは、継続利用が前提ですので、安全性や有効性に加えて、経済性(費用対効果)の高い製品を選ぶことも大切なポイントです。
まとめ
COVID-19予防のためのビタミンDのエビデンスを解説しました。
COVID-19の高リスク群とされる人は、基礎疾患を有する人や高齢者です。そして、高リスク群に共通して、顕著に不足しているビタミンは、ビタミンDです。
今回はCOVID-19との関連を中心にお話ししました。一方、近年の研究により、生活習慣病や慢性疾患でのビタミンD低値、および高齢者の多くがビタミンD欠乏や不足であることが示されています。「日本人の食事摂取基準」2020年版では、ビタミンDの目安量が引き上げられたものの、それでも、米国等での基準の半分以下の水準です。
COVID-19に関しても、その対策は今後も継続的に必要とされることでしょう。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクに対する予防法、およびCOVID-19の重症化予防として、セルフケアにおけるビタミンDサプリメントの利用も選択肢と考えられます。
参考文献
1) 蒲原 聖可:新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 対策 における機能性食品成分の臨床的意義 :ナラティブ・レビュー. Functional Food Research 16: 40-50, 2020
2) 蒲原聖可:新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 予防におけるビタミン・ミネラルの臨床的意義.Clinical and Functional Nutriology. 12:188-196, 2020
3) 蒲原聖可:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防および重症化軽減におけるビタミンDの臨床的意義. 日本統合医療学会誌.2020; in press.
ビタミンCは免疫能の維持に必須の栄養素
1. ビタミンCは全身免疫の維持に必須
ビタミンCは、抗酸化作用に加えて、免疫調節作用を有しており、自然免疫と獲得免疫のいずれにおいても重要な役割を果たしています。ビタミンCは、リンパ球やマクロファージなどの白血球に高濃度に含まれており、感染症にかかった時には、炎症反応の亢進と代謝需要の増加により、血中ビタミンC濃度が低下します。
2. 重症感染症ではビタミンCが枯渇
ビタミンCは、COVID-19の感染予防だけではなく、重症化予防のためにも重要です。感染症にかかっているときは、ビタミンCが減少し、ビタミンCの必要量が増加します。とくに、重症感染症では、ビタミンCのターンオーバー亢進によりビタミンCが消費され、ビタミンCが低下し、枯渇が生じます。そこで、COVID-19重症例の治療として、高用量での静脈内投与が行われることもあります。
ビタミンCが呼吸器感染症を予防
1.ビタミンCが風邪を早く治す
これまでの臨床試験では、一貫して、ビタミンC投与による普通感冒(風邪)の罹病期間短縮および重症度の軽減作用が示されています。29報の臨床試験の参加者11,306人を対象にした解析では、1日1,000mg(1g)のビタミンCサプリメントにより、成人では8%、小児では14%の罹病期間の短縮効果が見出されました。
また、肺炎リスクに対するビタミンC投与の有用性も示唆されています。
なお、いくつかの大規模な研究では、ビタミンCによる効果は検出できませんでした。この理由として、被験者の比較的栄養状態が良好であったことや背景因子の調整に限界があることが考えられます。
一方、対象者を限定した比較的小規模な研究では、ビタミンCの有用性が見出されています。例えば、高度の急性運動負荷のある被験者を対象とした3報では、普通感冒の罹患率が平均50%減少しました。また、英国男性を対象にした4報の研究では、ビタミンC投与により、風邪が平均30%減少しました。英国では、ビタミンCの食事からの摂取量が少ないとされ、ビタミンCサプリメントの効果が検出されやすいと考えられます。
2. 1,000mgのビタミンCが風邪による欠勤を14〜21%減少
一般に、1日1,000mg(1g)以上のビタミンCサプリメントの習慣的な摂取により、普通感冒(風邪)の罹病期間は顕著に短縮されます。
数百人の被験者を対象にしたビタミンCサプリメントによる風邪の罹病期間及び重症度への作用を検証した4報では、罹病期間の短縮傾向は5%ほどでした。そのうちの2報では、普通感冒のエピソードあたりの学校あるいは職場の欠席が14〜21%減少したことから、臨床的には有意な効果と判断できます。
3. ビタミンCサプリメントが高齢者の肺炎を減少
ビタミンCサプリメントによる介入試験3報では、肺炎リスクが80%以上、減少しました。 また、英国の平均年齢80歳の高齢入院患者57名(肺炎あるいは気管支炎の患者)を対象にした二重盲検ランダム化比較試験では、ビタミンC(200mg/日)投与により呼吸機能改善作用が示されました。
COVID-19とビタミンC
1. ビタミンCの抗コロナウイルス作用
基礎研究では、ビタミンCの抗コロナウイルス作用が報告されています。例えば、ニワトリ胚気管臓器培養細胞系では、ビタミンC投与により、コロナウイルス感染に対する抵抗性が亢進しました。
また、動物実験では、ビタミンCが、さまざまな細菌やウイルス感染のリスクを減らすことが示されています。例えば、ブロイラーにおいて、ビタミンC投与により、鳥コロナウイルスによる感染性気管支炎のリスク低減作用が示されました。
2. COVID-19の特徴
COVID-19では、炎症惹起サイトカイン類の産生亢進、CRP亢進が認められ、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心不全、敗血症などのリスクが高くなります。
COVID-19の重症化リスクとして、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病、高血圧、肥満などの基礎疾患が知られています。
3. COVID-19の重症化メカニズム
COVID-19の重症化例では、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や全身性炎症反応症候群(SIRS)が認められます。重症化機序として、当初、SARS-CoV-2感染における免疫の過剰反応によるサイトカイン・ストームの関与が注目されました。その後、COVID-19重症患者での炎症マーカーの検討などにより、現在、COVID-19重症化のメカニズムとして、原因ウイルス(SARS-CoV-2)による受容体(ACE2)の抑制を介した血管内皮障害と血栓形成による微小循環不全の関与があり、血栓症を生じ多臓器不全に陥る機序が考えられています。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、COVID-19の重症化例で認められます。ARDSでは、フリーラジカル産生による酸化ストレスの亢進やサイトカイン類の過剰放出によるサイトカイン・ストームが生じ、細胞や組織の障害、血管内皮障害と血栓形成による微小循環不全から臓器機能不全が引き起こされ、致死的となります。
COVID-19入院患者のうち26%がARDSやショックなどの合併症のためにICUで加療を受けています。
4. COVID-19の重症者はビタミンC欠乏
スペインにおいて、COVID-19での重症ICU患者18人を対象に、血中ビタミンCを測定したところ、17人では検出限界(1.5mg/L)未満、1人では低値(2.4mg/L)でした(一般集団におけるビタミンCの基準値は5mg/L以上)。
また、米国からの報告では、COVID-19重症例21人(平均年齢61歳、21人中生存は11人)を解析したところ、血中ビタミンCとビタミンDが顕著に低値でした。ビタミンCは、生存者11人と死亡者10人の比較では、顕著な差が認められました。
COVID-19の重症者において、ビタミンCが欠乏する理由は、炎症反応の亢進による代謝消費の増加、糸球体の濾過量の増加、消化管吸収の低下などが考えられます。
ビタミンCの静脈投与により、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)におけるサイトカイン・ストームの抑制効果が示されています。また、高濃度ビタミンC静注によるARDSの改善などの有用性を示した症例も数多く報告されています。
5. 患者に対するビタミンCの治療効果
重症患者ではビタミンC値が劇的に低下しています。また、ビタミンCの投与による有効性も知られています。
例えば、ICU入院患者1,766人を対象とした12報の解析では、ビタミンC投与がICU滞在期間を8%短縮することが示されました。また、8報の解析では、最も長期間の人工呼吸を必要とした患者において、ビタミンCが人工呼吸器の持続時間を短縮することが見出されました。
さらに、米国でのICU患者を対象に、ビタミンCとビタミンE(αトコフェロール)を標準治療に併用した群(301人)と、標準治療単独群(294人)を比較した臨床研究では、臓器不全や重症度、死亡率低下といった指標で、抗酸化サプリメント投与による好影響が示されました。
2019年に、米国で発表された敗血症関連ARDS患者167人を対象とした臨床試験では、1日15g/日のビタミンCの静脈投与を4日間実施することで死亡率が低下しました。
6. ビタミンCを静脈投与した症例報告
COVID-19に対して、ビタミンCの静脈内投与を実施した症例シリーズが米国から報告されています。ビタミンC静注が実施されたCOVID-19患者17例(平均年齢64歳、BMI 32.7)のデータが解析された結果、ビタミンC静注後に、炎症や血栓形成にかかわる指標が有意に低下していました。
また、ビタミンC静注に関連する有害事象は認めませんでした。したがって、高リスク群でのCOVID-19重症例において、ビタミンC静注による補完療法としての有用性が示唆されます。また、今後、COVID-19の重症例に対する治療としての高濃度ビタミンC療法の有用性の検証が期待されます。
なお、2020年2月に、中国の武漢において、高濃度ビタミンCの静脈投与によるCOVID-19重症例に対する臨床試験が計画されましたが、患者数の減少により被験者が集まらず、試験が中止となっています。
7. COVID-19に関する臨床試験
現在、ビタミンCを用いた臨床試験が進行しています。これらの臨床試験は、次の5種類に分類できます。
・COVID-19重症例に対するビタミンC静注療法
・COVID-19の治療としてのビタミンCサプリメント経口投与
・COVID-19の予防のためのビタミンCサプリメント経口投与
・標準治療としてビタミンC投与の試験
・ビタミンCを偽薬群として投与
※詳細は参考資料に掲載
ビタミンCの食事摂取基準
日本人の食事摂取基準2020年版でのビタミンCの推奨量は、男女とも12歳以上で1日あたり100mgです。1日100mgのビタミンCの摂取は、健常者での血漿レベルを正常範囲内に維持できます。
一方、重篤な患者において、血漿中ビタミンC濃度を正常範囲内にまで上昇させるためには、1〜4g/日の高用量が必要と考えられています。
ビタミンCサプリメントの安全性・用量
ビタミンCサプリメントは、高い安全性が示されています。免疫能の維持など保健機能のための一般的な用量は、1日あたり1,000〜2,000mgです。
ビタミンCは、安全で安価な必須栄養素であることから、ビタミンDサプリメントなど他の補完的な栄養療法とともに、COVID-19の重症化リスク低減としての選択肢です。
おわりに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現状、つまり、感染の世界的な拡大や不顕性感染の存在を考えると、ウイルスの根絶は現実的ではありません。また、治療薬に関しては、副作用のリスクや耐性ウイルスの発生リスクがあります。さらに、ワクチンについては、有効性や持続性、摂取の優先順位や安定供給、副反応などの課題が生じます。
本稿で示したように、ビタミンCの免疫調節作用や抗ウイルス作用は確立しており、ビタミンCの不足や欠乏は呼吸器感染症のリスクです。また、COVID-19におけるビタミンC投与の補完療法としての臨床的意義も示唆されています。
さらに、ビタミンCサプリメントは、これまでのエビデンスにより、高い安全性が示されています。これは、医療の原則であるprimum non nocere(first, do no harm、「まず、害を与えてはならない」)です。
COVID-19対策において、ビタミンやミネラルといったサプリメントは、治療目的ではなく、免疫能を維持し、感染に対する抵抗性を高める補完療法としての位置付けとなります。
ウィズ・コロナとなった今日、公衆衛生の視点から、新型コロナウイルス感染への予防およびCOVID-19の重症化予防として、セルフケアにおけるビタミンCサプリメントの活用も選択肢となります。
参考資料
新型コロナウイルス―サプリメント・機能性食品の使い方
新型コロナウイルス ‐ ビタミンDによるCOVID-19対策
参考文献
蒲原聖可.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関するビタミンCの臨床エビデンス.Clinical and Functional Nutriology 12:334-342, 2020
亜鉛の抗ウイルス作用と呼吸器感染症予防効果
1. 亜鉛は免疫機能に必須
亜鉛は、必須微量元素(ミネラル)の一つであり、生体内の数百種類の酵素の働きに必要です。また、亜鉛は免疫の機能の維持にも欠かせないミネラルであり、亜鉛が欠乏すると、Bリンパ球数と抗体の産生が減少します。
これまでの研究では、亜鉛欠乏では、風邪の原因ウイルス、HSV、HCV、HIVなどのさまざまなウイルスの感染リスクが高まることが示されています。
2. 亜鉛がウイルスを抑えるメカニズム
亜鉛による抗ウイルス作用について、いくつかのメカニズムが考えられています。
まず、亜鉛は、インターフェロンの産生を増やし、抗ウイルス作用を示します。また、亜鉛は細胞膜を保護し、安定化することで、ウイルスの細胞への侵入を阻害します。
亜鉛の特徴として、クロロキンなどのイオノフォア(細胞などの生体膜に作用し、特定のイオンを選択的に透過させる働きをもつ、脂溶性の低分子化合物の総称)と併用投与することで、亜鉛の抗ウイルス作用が増強されることがわかっています。
3. 亜鉛はコロナウイルスの複製を阻害します。
コロナウイルスは、RNAウイルスに分類されます。RNAウイルスに対して、亜鉛は、RNAウイルスを複製する酵素であるRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を阻害することで、ウイルスの複製を防ぐ働きがあります。
この作用は、SARSコロナウイルス(SARS-CoV-1)を用いた研究でも確認されています。
4. 亜鉛が風邪や肺炎を予防・改善する
亜鉛の欠乏や不足は、免疫能の低下から、呼吸器感染症を含めた、さまざまな感染症のリスクが高くなります。また、亜鉛サプリメントによる風邪や肺炎の感染予防や症状改善効果が示されています。
これまでの亜鉛を投与した研究に関する系統的レビュー/メタ解析によると、
– 成人における風邪の罹病期間が33%短縮、
– 小児5,193 人では肺炎の罹患率が13%低下、
– 成人2,216 人での重度の肺炎の死亡率が低下
といった亜鉛の効果が見出されました。
COVID-19対策における亜鉛の臨床的意義
1. COVID-19の高リスク群は亜鉛不足
肥満や糖尿病、高齢者などは、COVID-19の高リスク群です。これまでの研究では、これらの人々では、亜鉛が低値であることがわかっています
例えば、加齢に伴う免疫能の低下は、免疫老化として知られており、亜鉛の利用効率の低下が関係します。また、2万人の糖尿病患者を調べた研究では、亜鉛低値が認められました。
2.医薬品が亜鉛を低下させる
医薬品の一部は、亜鉛の血中濃度を低下させる副作用があります。
まず、高血圧の治療薬である降圧利尿剤は、尿中亜鉛排泄を増加し、組織中の亜鉛濃度を低下させます。6ヵ月以上の服用では、血中の亜鉛値が大幅に低下します。
また、ACE阻害剤やARBという種類の高血圧治療薬も、血中亜鉛濃度が低下します。その他、スタチン剤の服用も、亜鉛の低下を生じることがわかっています。そのため、高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病患者は、COVID-19の高リスク群である上に、医薬品服用が原因の亜鉛不足というリスクもあります。
3.亜鉛不足ではCOVID-19が重症化し予後不良となる
COVID-19重症例では亜鉛不足であること、また、亜鉛欠乏例では予後不良となることが報告されています。
まず、フランスにおいて、COVID-19成人患者108人(重症者34人を含む.重症は6L/分以上の酸素投与必要例と定義)を調べた研究では、COVID-19の重症度が、亜鉛の低下と有意に相関していました。血中亜鉛値は、COVID-19非重症者74人では0.7±0.2 mg/L、重症者34人では0.6±0.1 mg/Lであったということです。
次に、亜鉛が欠乏していると、COVID-19の予後が不良という研究がインドから報告されています。具体的には、COVID-19入院患者47人の亜鉛値を測定し、健常対照者45人との比較が行われた結果、COVID-19患者では、亜鉛値が有意に低値でした。
COVID-19患者のうち57.4%(27人)が亜鉛欠乏症であり、この患者群では、合併症や急性呼吸窮迫症候群のリスクが高く、ステロイド療法の必要性、長期入院、および死亡率の増加が認められました。
4. 日本人での亜鉛低値はCOVID-19重症化因子
日本人のCOVID-19患者でも、血中亜鉛の低値が、COVID-19の重症化因子であることが示されています。
具体的には、2020年3月から5月までの間に、大阪府の堺市立総合医療センターに入院したCOVID-19患者62人を対象に、血中亜鉛の濃度とCOVID-19重症例との関連が検証されました。重症度の内訳は、軽症・中等症が49人、重症が13人でした。
29人の患者で血中亜鉛値が測定された結果、亜鉛の血中濃度は、軽症・中等症(22人)では平均87.7μg/dL、重症(7人)では平均62.4μg/dLであり、重症の患者では亜鉛が低い値でした。
また、29人中9人が、亜鉛欠乏症である低亜鉛血症(血清亜鉛値が70μg/dL未満)であり、その患者群での重症度の内訳は軽症・中等症が3人 (14%)、重症が6人(86%)でした。
これらのデータに関する解析の結果、低亜鉛血症がCOVID-19の重症化リスク因子であるとされました。
COVID-19に対する亜鉛の有用性エビデンス
1. 亜鉛がCOVID-19の症状を24時間で改善
米国からの症例報告では、COVID-19の症状初期に、高用量の亜鉛を摂取することで、24時間以内に、症状の軽減を認めたということです。米国では、風邪やインフルエンザの初期に、高用量の亜鉛を摂る対症療法が知られています。
米国において、高用量の亜鉛塩トローチの摂取後24時間以内にCOVID-19の症状軽減を認めたとする4症例、報告されました。4例のうち、2例はクエン酸亜鉛(23 mgの亜鉛)、1例はクエン酸亜鉛/グルコン酸亜鉛(23mg)、1例は酢酸亜鉛(15mg)が用いられ、2-4時間毎にトローチを服用し、20-30分かけて溶解しました。
なお、摂取量として、1日200mgを超えないように指示されています。発熱や咳、疼痛などの症状を感じた初日から亜鉛トローチを開始し、摂取期間は、10日間から14日間でした。
2. 治療としての亜鉛投与例
米国では、2020年初期の段階で、COVID-19治療アルゴリズムに亜鉛投与が含まれており、治療の一環として実施されています。例えば、2020年3月に、米国ニューヨーク市の病院に入院したCOVID-19患者371人に対する治療として、88%が亜鉛投与を受けていました。
前述の日本人COVID-19患者において、亜鉛低値が重症化リスク因子であることを示した報告では、重症患者への亜鉛投与の経過が示されています。具体的には、ICUに入院した重症患者4人は、当初、いずれも亜鉛欠乏の状態でしたが、経腸栄養によって亜鉛を含む適切な栄養管理が提供された結果、血中亜鉛濃度が漸増し、1ヶ月程度で症状が改善し、退院しました。
3. 亜鉛により院内死亡率が24%低下
前述のように、亜鉛は、RNAウイルスの複製を阻害することから、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する有効性が考えられます。
米国では、亜鉛+イオノフォアの投与により、COVID-19患者の院内死亡率が24%低下したと報告されています。具体的には、2020年3月10日から5月20日までの間にニューヨーク市の4つの病院に入院したCOVID-19成人患者3,473人が対象となり、そのうち1,006人(29%)が亜鉛+イオノフォアを投与されました。
解析の結果、亜鉛+イオノフォア投与群は、非投与群に比べて、院内死亡率が24%低下していました。
米国ニューヨーク市の医療機関からの別の報告では、他の治療法(医薬品)と亜鉛を併用して投与することで、退院率が高く、ICUへの入院が低く、死亡率あるいはホスピス移送の割合が低いというシナジーが示されています。
4. COVID-19治療としての亜鉛投与試験
以上のように、COVID-19対策として、亜鉛の有用性が示唆されています。
2021年1月現在、COVID-19の予防や治療に関して、亜鉛の有用性を調べるために、45以上の臨床試験が、登録され、進行中です。
なお、これらの臨床試験では、亜鉛サプリメント単独の投与ではなく、ビタミンCやビタミンDとの併用投与、医薬品との併用投与です。
亜鉛の用法・用量
1. 亜鉛の推奨量
日本人の食事摂取基準2020年版での亜鉛の推奨量は、男性では、18歳から74歳まで11mg、75歳以上で10mgです。女性では18歳以上で8mgです。また、耐容上限量は、年代により、男性では40mg〜45mg、女性では30mg〜35mgとされています。
亜鉛サプリメントは、適切な摂取量であれば、高い安全性が示されています。免疫能の維持など保健機能のための一般的な亜鉛サプリメントの摂取目安量は、1日あたり10mg〜20mg前後です。
症状の改善を目的とした場合、予防よりも多い量を数日間、摂取します。例えば、風邪に対する亜鉛の有用性を検証した臨床試験では、亜鉛を1日あたり80mgの用量で、数日間の投与が行われています。
また、症状の初期に、亜鉛トローチ(13mgの亜鉛含有)を日中に1時間から1時間半ごとに、1日6回摂取し、合計80mg/日の投与などという方法もあります。
その他、日本での亜鉛欠乏症の治療指針では、亜鉛として成人50〜100mg/日、小児1〜3mg/kg/日または体重20kg未満で25mg/日、体重20kg以上で50mg/日を分2で食後に経口投与とされています。
おわりに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現状、つまり、世界での感染者が一億人にせまる感染の拡大や、症状がない不顕性感染の存在を考えると、ウイルスの根絶は現実的ではありません。また、治療薬に関しては、副作用や耐性ウイルスの発生リスクがあります。さらに、ワクチンについては、有効性や持続性、接種の優先順位や安定供給、副反応、変異株の出現などの課題が生じます。
亜鉛の免疫調節作用や抗ウイルス作用は確立しています。また、COVID-19治療における補完療法として、一定の有用性が示されています。
本邦も含めた先進国でも、亜鉛の摂取不足が示されており、特に、COVID-19の高リスク群である肥満や糖尿病などの生活習慣病有病者で顕著です。さらに、降圧剤などの医薬品の投与が、亜鉛不足を生じるリスクとなります。
COVID-19対策において、ビタミンやミネラルといったサプリメントは、治療目的ではなく、免疫能を維持し、感染に対する抵抗性を高める補完療法としての位置付けとなります。
ウィズ・コロナとなった今日、公衆衛生の視点から、新型コロナウイルス感染への予防およびCOVID-19の重症化予防として、セルフケアにおける亜鉛サプリメントの活用も選択肢となります。
参考文献
1) 蒲原聖可. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関する亜鉛の臨床エビデンス.医と食. 2021;13:in press.
2) 蒲原聖可. EBMサプリメント事典-科学的根拠に基づく適正使用指針.2008年. 医学出版社,東京.
3) 蒲原聖可. サプリメントと医薬品の相互作用ハンドブック―機能性食品の適正使用情報.2015年. 医学出版社,東京.
呼吸器感染症におけるプロバイオティクスの有用性
1. プロバイオティクスとシンバイオティクス
プロバイオティクスとは、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを整え、ヒトに有益な作用をもたらす生きた微生物の総称です。
プレバイオティクスとは、上部消化管で分解・吸収されず、大腸に共生する有益な菌の選択的な栄養源となり、フローラのバランスを維持し、健康の増進に有用な食品成分を指します。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを合わせて「シンバイオティクス」といいます。これに対して、腸内細菌叢のバランスが崩れ、異常をきたした状態は、「ディスバイオーシス」と呼ばれます。
2. 腸肺相関と呼吸器感染症
腸内細菌叢が、全身の健康や疾患と関連することが見出されており、脳腸相関、腸肝循環、腸筋相関などの概念も示されています。
呼吸器疾患に関する研究では、消化管(腸内細菌叢)と呼吸器(肺)の相関が示唆されており、腸肺相関や腸肺軸(Gut-Lung Axis)と呼ばれています。具体的には、乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティクスの摂取による呼吸器感染症の予防効果が知られています。
3. プロバイオティクスが呼吸器感染症を予防
プロバイオティクスによるウイルス性呼吸器感染症の罹患率低下効果および罹病期間短縮効果が報告されています。例えば、20報を対象にしたメタ解析では、成人及び小児において、偽薬群に比べて、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)投与群において、急性呼吸器感染症の罹病日数の有意な減少、欠席や欠勤日数の有意な減少が認められました。
また、2015年のコクランでのメタ解析では、プロバイオティクスが急性上気道感染症のリスクを47%減少することが示されました。
その他、インフルエンザ、ライノウイルス、RSウイルスに関する研究では、プロバイオティクス投与によるウイルス性呼吸器感染症の罹患リスク低下および重症度軽減といった作用が示されています。
4. 呼吸管理とプロバイオティクス
COVID-19患者では、一部が人工呼吸器などによる呼吸管理が必要となります。例えば、日本のデータでは、2,600 例の入院患者のうち、酸素投与を要しなかった症例が62%、酸素投与を要した症例が30%、人工呼吸管理やECMOによる集中治療を要した症例が9%でした。
これまでの研究では、呼吸管理を必要とする重症患者において、プロバイオティクス投与の有用性が示されています。例えば、2報のランダム化比較試験(RCT)では、プロバイオティクス[乳酸菌ラクトバチルスGG、枯草菌など]を投与された人工呼吸器管理の重症患者が、偽薬群に比べて、人工呼吸器関連肺炎の発症が大幅に減少したということです。今後、COVID-19患者での検証が期待されます。
生体防御機構におけるプロバイオティクスの働き
1. 粘膜免疫における分泌型IgAの重要性
ウイルス感染の対策では、粘膜免疫の分泌型IgAの働きが大切です。IgAは、粘膜防御機構において、最初に働く免疫グロブリンです。特に、SARS-CoV-2の感染初期病巣は、上皮細胞を覆う粘液であり、感染防御において、粘液中の分泌型IgAの役割が大きいと考えられます。
本邦では、IgA分泌亢進作用を有するプロバイオティクスが免疫力向上の訴求にて製品化されています。
消化管の粘膜層は、抗生剤やプロトンポンプ阻害剤、高脂肪食、食物繊維不足などの影響を受けます。粘膜の減少は、IgAの低下やディスバイオーシスにより、感染に対する防御を低下させます。
欧米人は、日本人を含めたアジア人と比べて、遺伝的IgA欠損症が高率に認められます。そのため、この相違点が、日本と欧米とのCOVID-19の死亡率に差を認める理由の一つとの考えもあります。
2. 短鎖脂肪酸の作用
腸管粘膜でのバリア機能には、常在細菌叢と食物繊維の代謝物も関与します。特に、短鎖脂肪酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸の作用が重要です。これらの短鎖脂肪酸は、免疫調節作用や抗炎症作用、生活習慣病の予防作用を有しています。
3. 加齢による腸内細菌叢の変化
腸内細菌叢の変化に影響を与える因子として、宿主の年齢、食事や運動などの生活習慣、服薬などが知られています。その中でも、宿主の年齢が腸内細菌叢のバランスに大きな影響を与えます。具体的には、中年期から老年期にかけて、ビフィズス菌が減少し、ウェルシュ菌が増加します。なお、100歳以上の超高齢者(centenarian)の腸内細菌叢は、ビフィズス菌の割合が比較的高いことがわかっています。
高齢者における腸内細菌叢の変化は、咀嚼・嚥下能力の低下、胃酸・胆汁酸の分泌低下など加齢性変化に基づくと考えられ、免疫能の低下の要因ともなります。
また、腸管バリア能が低下した「Leaky Gut(リーキー・ガット)」という状態では、炎症惹起因子が循環血液中に流れ、慢性炎症に起因する加齢性疾患を生じることになります。Leaky Gutに対しても、プロバイオティクスが有用です。例えば、ビフィズス菌は、乳酸や酢酸を産生します。酢酸は、腸管上皮細胞において、タイトジャンクション関連因子の発現を増やします。
COVID-19とディスバイオーシス
1. 消化管へのSARS-CoV-2感染
COVID-19は、発熱、咳、筋肉痛、倦怠感、肺炎などの症状を示します。これは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)が、原因ウイルスであるSARS-CoV-2の機能的受容体であり、飛沫感染により主に作用するのは、ACE2を多く発現している呼吸器系となるからです。一方、ACE2は、消化管でも、高発現しており、SARS-CoV-2は、消化管上皮にも感染します。
2. COVID-19と消化器症状
ACE2は、腸における炎症反応の重要な調節因子です。そのため、SARS-CoV-2ウイルスが消化管でのACE2をダウンレギュレーションすることで、腸での炎症が惹起され、消化管症状を生じる機序が推定されています。
消化器症状を示す患者の割合は、数%程度から、半数以上と報告者によりさまざまです。本邦における入院を要したCOVID-19 患者2,600 例の解析によると、下痢は約1 割にみられました。これに対し、諸外国では、COVID-19患者の半数が消化器症状を示したという報告もあります。
3. 便-口腔感染の可能性
SARS-CoV-2ウイルスが便から検出されており、便-口腔感染の可能性も否定できないとされています。
米国での最初のCOVID-19患者では、7病日目にもウイルスが便に見出されました。 また、中国での入院患者73人を調べたところ、半数で便中のウイルスが陽性であり、さらに、患者の20%以上が、呼吸器でウイルスが消失した後でも、糞便でウイルスが陽性でした。
シンガポールからの報告では、COVID-19患者の50%において、便からウイルスが検出されましたが、下痢などの消化器症状を示したのは、これらの患者の約半数であったということです。
これらのデータから、COVID-19患者では、便中ウイルスを想定した適切な感染予防策が求められます。
4. COVID-19でのディスバイオーシス
COVID-19での腸内細菌叢への影響が報告されています。例えば、中国からの小規模な症例シリーズでは、COVID-19患者において、乳酸菌(ラクトバチルス)とビフィズス菌の減少を伴うディスバイオーシスが見出されました。
プロバイオティクスは、多くの種類があり、多彩な作用を有しています。COVID-19対策では、腸内細菌叢のバランスを維持し、ディスバイオーシスの予防・改善が有用と考えられます。
COVID-19対策としてのプロバイオティクスの臨床的意義
1. プロバイオティクスによるウイルス侵入抑制およびRASへの作用
プロバイオティクスは、ウイルス侵入を抑制し、抗ウイルス免疫の賦活、および、SARS-CoV-2によるRASの調節不全による障害を抑制すると考えられています。
まず、乳酸菌の代謝産物である短鎖脂肪酸(SCFA)や乳酸、過酸化水素、バクテリオシンなどの抗菌ペプチド(AMP)は、ウイルス侵入の抑制や、ウイルス量の減量作用が知られています。
ACE2は、RASにおいて血圧の調節作用を有しています。SARS-CoV-2は、腸細胞に侵入し、ACE2発現がダウンレギュレーションされる結果、腸肺軸の防御機能が低下し、感染リスクが高くなります。SARS-CoV-2に感染すると、肺組織や小腸上皮細胞、血管内皮細胞といったACE2高発現組織において、ACE2発現が抑制され、アンジオテンシンII(Ang II)が増加し、血管収縮、組織炎症、酸化ストレス亢進を生じます。
プロバイオティクスは、障害された上皮バリア機能を修復し、それによって下流にあるACE2受容体発現細胞を保護します。また、一酸化窒素(NO)生成の抑制、高血圧の改善、酸化ストレスの抑制といった働きがあります。ACE阻害ペプチドや短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)の産生を介して、降圧作用や抗炎症作用を示します。
2. プロバイオティクスが心血管合併症と脂質異常症を改善
肥満や高血圧などの基礎疾患は、COVID-19の重症化リスクです。SARS-CoV-2感染によるACE2ダウンレギュレーションからRASの調節不全は、炎症や血管収縮、血栓症などのリスクを高めます。肥満やメタボリック症候群、高血圧や2型糖尿病などの生活習慣病では、ディスバイオーシスが認められます。ディスバイオーシスは、腸の炎症を亢進し、心血管リスクを高めます。SARS-CoV-2感染によるRAS調節不全は、炎症、血管収縮、繊維化、血栓形成といった心血管リスクとなります。
ディスバイオーシスによる腸のバリア機能障害は、腸内細菌由来のエンドトキシン(リポ多糖やLPS)および代謝物の循環への移行を生じます。
これまでの多くの研究では、プロバイオティクス投与による糖尿病や脂質異常症などの改善効果が示されています。
3. COVID-19治療時の抗生剤使用とプロバイオティクス
中国では、COVID-19患者の58〜71%に抗生剤が投与され、2〜36%の患者で下痢が認められたと報告されています。
抗生物質の投薬中には、プロバイオティクス投与により腸内細菌叢を改善する方法が考えられます。例えば、2012年のメタ解析では、プロバイオティクスが抗生物質に関連した下痢の軽減に効果があるとされました。
4. 免疫賦活作用を訴求するプロバイオティクス製品
本邦では、免疫力の向上を訴求するプロバイオティクス製品が上市されています。免疫機能の評価ではさまざまな指標が用いられており、それぞれの製品に含まれるプロバイオティクスに関して、一定の有用性が示されています。例えば、粘膜免疫で働くIgAの分泌亢進作用を有するプロバイオティクスが、免疫力向上の訴求にて製品化されています。
ウイルス感染時にはインターフェロン(IFN)産生が促進され、生体防御機構として働きます。特に、プラズマサイトイド(形質細胞様)樹状細胞(pDC)は、免疫の司令塔として、高い?型IFN産生作用を有しています。pDC活性化を介した?型IFN産生は、腸内細菌叢による影響を受け、pDCを標的としたプロバイオティクスも知られています。
ウイルス感染時に、マクロファージや樹状細胞により産生されたIL-12やIL-18は、NK細胞を活性化します。NK細胞は、血中の他、肺や消化管にも存在します。NK細胞の活性化作用を免疫賦活作用の機序とするプロバイオティクスがあります。具体的には、Streptococcus thermophilus (ストレプトコッカス・サーモフィラス)ST9618株、Lactobacillus delbrueckii(ラクトバチルス・デルブルエッキイ)ssp.bulgaricus OLL1073R-1(1073R-1 乳酸菌、R-1株などです。
おわりに
SARS-CoV-2の受容体であるACE2は、消化管全体に広く発現しており、消化管での感染や便中へのウイルス排泄が確認されています。COVID-19ではディスバイオーシスが生じ、消化器症状を示します。また、COVID-19重症化リスク因子である併存疾患でも、ディスバイオーシスが認められます。さらに、これらの疾患では、プロバイオティクスの投与による病態の改善が知られています。
プロバイオティクスの投与は、免疫調節作用、呼吸器感染症リスク低減、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病の改善に有用です。腸肺相関から、プロバイオティクスは、SARS-CoV-2感染リスク低減だけではなく、COVID-19でのRAS調節不全において、防御的に作用します。プロバイオティクスは、COVID-19対策での有用性が考えられます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現状、つまり、世界での感染者が2億人にせまる感染の拡大や、症状がない不顕性感染の存在を考えると、ウイルスの根絶は現実的ではありません。
また、治療薬に関しては、副作用や耐性ウイルスの発生リスクがあります。 さらに、ワクチンについては、有効性や持続性、接種の優先順位や安定供給、副反応、変異株の出現などの課題が生じます。
COVID-19対策において、ビタミンやミネラルといったサプリメントは、治療目的ではなく、免疫能を維持し、感染に対する抵抗性を高める補完療法としての位置付けとなります。
ウィズ・コロナとなった今日、公衆衛生の視点から、新型コロナウイルス感染への予防およびCOVID-19の重症化予防として、セルフケアにおける機能性食品の活用も選択肢と考えられます。
参考文献
1) 厚生労働省.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5版(2021年5月26日発行)
2) 蒲原聖可.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防におけるビタミン・ミネラルの臨床的意義.医と食. 2020;12:188-196.
3) 蒲原聖可. ビタミンDが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防に有用. 医と食2020;12:246-251.
4) 蒲原聖可. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関するビタミンCの臨床エビデンス. 医と食2020;12:334-342.
5) 蒲原聖可. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関する亜鉛の臨床エビデンス. 医と食2021;13(1-2):45-53.
6) 蒲原聖可. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関するプロバイオティクスの臨床エビデンス. 医と食2021;13(3):52-61.
COVID-19とオメガ3系脂肪酸
1. オメガ3サプリメントが感染リスクを抑制:コホート研究
オメガ3系脂肪酸のサプリメント利用者では、非利用者に比べて、SARS-CoV-2感染リスクが有意に低いという報告があります。
具体的には、英国での「COVID-19症状研究アプリ」のユーザー372,720人を対象に、2020年のパンデミック第1波から7月末までのサプリメントの習慣的な利用と、COVID-19感染(SARS-CoV-2のPCR検査陽性)リスクとの関連が検証されました。
サプリメント利用者175,652人と非利用者197,068人のデータが解析された結果、プロバイオティクスの利用者では14%、オメガ3系脂肪酸では12%、マルチビタミンでは13%、ビタミンDでは9%、SARS-CoV-2感染リスクが低いという有意な相関が見出されました。米国(対象45,757人)およびスウェーデン(対象27,373人)でのコホート研究でも、同様の傾向が認められています。
2. EPAが罹病期間を短縮:症例報告
オメガ3系脂肪酸サプリメントによるCOVID-19への有効性を示した最初の症例として、米国にて、EPA投与によりCOVID-19の罹病期間が短縮されたという報告があります。
具体的には、COVID-19患者2人(脂質異常症を有する以外は健康な53歳女性[患者#1]と、患者#1の娘である21歳女性[患者#2])に関して、症状2日目にイコサペント酸エチル(1日4g、分2)の投与を開始した患者#1と、非投与の患者#2の臨床経過が比較されました。
その結果、患者#1は、5日間のEPA投与後の7病日にはCOVID-19関連症状が消失し、全快しています。
一方、EPA非投与の患者#2は、18病日の時点で、症状の軽減を感じ始めたという経過でした。
この2症例は、家族であり、遺伝的背景や生活環境には共通点が多いと考えられます。 同期時にCOVID-19に罹患し、基礎疾患を有する患者#1のほうが早期に全快し、健康な若年者である患者#2が、症状の経過が長かったことが注目される点です。
オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用を介した有用性が示唆されます。
3. オメガ3指数が高いとCOVID-19死亡率が低い:臨床研究
米国での予備的な臨床研究において、オメガ3指数(オメガ3インデックス, O3 I)が高いと、COVID-19での死亡率が低い傾向にあるという負の相関が示されています。
オメガ3指数(O3 I)は、赤血球膜中の総脂肪酸量に占めるEPAとDHAの割合を示す指標です。オメガ3指数が高いと、オメガ系必須脂肪酸の抗炎症作用により、COVID-19の重症化予防作用が期待できます。
そこで、COVID-19入院患者100人を対象に、入院時の採血からオメガ3指数(O3 I)を測定し、死亡率との関連が検証されました。
100人中14人が死亡しました。解析の結果、オメガ3指数が高いとCOVID-19死亡率が低いという有意な相関が見出されています(図)。
4. COVID-19重症例でのオメガ3系脂肪酸の有用性:臨床試験
COVID-19重症例において、オメガ3系脂肪酸の有用性を示した臨床試験が報告されています。
具体的には、COVID-19重症患者128人を対象に、オメガ3系脂肪酸(EPA 400mg+DHA 200mg含有サプリメント)投与群42人と、対照群86人の2群について、14日間の投与が行われ、投与前後での検査値の変化や生存率等が調べられました(図)。
オメガ3系脂肪酸投与群の28人と、対照群の73人のデータが解析された結果、1カ月生存率は、オメガ3系脂肪酸サプリメント投与群では21%(6人)であったのに対して、対照群では3%(2人)であり、サプリメント群のほうが高い生存率でした。
また、サプリメント群では、対照群に比べて、呼吸状態に関する数値や腎機能に関する検査値での改善が認められました。 これらの結果から、COVID-19重症患者でのオメガ3系脂肪酸サプリメントの有用性が示唆されます。
5. 嗅覚障害に対するオメガ3系脂肪酸の推奨
COVID-19患者の5%から85%に、嗅覚障害が認められます。
2021年1月(電子版は2020年8月)、イギリスの専門家パネルが、COVID-19に伴う新規発症の嗅覚障害に関して、ガイドラインを発表しました。
それによると、オメガ3系脂肪酸サプリメントは、COVID-19合併症としての嗅覚障害に関する検証は行われていないが、これまでに、嗅覚障害に対する一定のエビデンスが示されているとされました。
なお、現在、米国において、COVID-19に合併する嗅覚障害に対して、オメガ3系脂肪酸サプリメントを投与する臨床試験が進行中です。
オメガ3系脂肪酸の摂取方法
1. 摂取量
臨床研究でのオメガ3系脂肪酸の投与量は、1日あたり数百mgから1gあるいは2g程度が多くみられます。脂質異常症患者に対して、1日4gのDHAあるいはEPAを投与した臨床試験もあります。
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』では、「n-3系脂肪酸」として、下記の基準が設定されています。
●n-3系脂肪酸摂取の1日あたりの目安量
<男性>
18〜49歳: 2.0g
50〜74歳: 2.2g
75歳以上: 2.1g
<女性>
18〜49歳: 1.6g
50〜64歳: 1.9g
65〜74歳: 2.0g
75歳以上: 1.8g
2. 安全性
食品成分であり、安全性は高いといえます。目安量あるいは臨床試験での投与量に準じた摂取量であれば、特に問題となる有害事象は認められません。
おわりに
EPAやDHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症や免疫調節を介した効果が知られており、動脈硬化性疾患から認知症にいたるまで、さまざまな疾患における有用性が示されています。
COVID-19に関しては、観察研究において、オメガ3系脂肪酸によるCOVID-19発症リスク低減や死亡率の低下が示唆されました。また、臨床試験では、COVID-19重症例に対するオメガ3系脂肪酸投与による死亡率低下が認められました。
現時点でのエビデンスを考慮すると、ウィズ・コロナとなった今日、COVID-19対策として、オメガ3系脂肪酸の摂取は合理的な選択肢の一つと考えられます(図)。
さらに、公衆衛生学の視点からは、COVID-19だけではなく、今後、生じうる新興感染症への対策として、機能性食品の活用も重要な選択肢と考えられます。
参考文献
1) 蒲原聖可. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防および治療に関するオメガ3系脂肪酸の臨床エビデンス. 医と食2021;13:57-64.
2) 蒲原聖可.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としての機能性食品成分の有用性に関する臨床エビデンス:アップデート2021. Functional Food Research. 2021;17:75-104.
京都新聞読者情報誌 山瀬理恵子のアス飯レシピ10月号掲載!