腸内細菌セミナー受講終了!

『若さの秘訣、#腸内細菌 と健康の関係とは』

をzoom受講しました🙇‍♀️

姫野先生、内藤先生、素晴らしいご講演をありがとうございました!未来色豊かで非常に濃厚且つ鮮烈な内容で大変面白く勉強になりました!凄い時代がやって来たなと率直に!今後も引き続き注目をさせていただきます!

#内藤裕二(ないとう ゆうじ)

京都府立医科大学大学院医学研究科

生体免疫栄養学 教授

1983年京都府立医科大学卒業、2001年米国ルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授として渡米。帰国後は、(独)科学技術振興機構科学技術振興調整費研究領域主幹、2008年京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授、2015年本学附属病院内視鏡・超音波診療部部長、2021年から現職。農林水産省農林水産技術会議委員、2025大阪・関西万博大阪パビリオンアドバイザーを兼務している。著書に、消化管(おなか)は泣いています(ダイヤモンド社 東京 2016年)、すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢〜基本知識から疾患研究、治療まで(羊土社 東京 2021年)、酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる(あさ出版 東京 2022年)、すごい腸とざんねんな脳(統合法令出版 東京 2023年)など

@himenotomomi_

『Jリーグ/レノファ山口FC』山瀬功治選手とスポンサーシップ契約を締結。血液データに基づいた医学的なアプローチでパフォーマンスの向上をサポート。

2022年3月 有限会社オフィスひめの(本社:東京都品川区、代表取締役社長:北山弥栄奈)は、Jリーグ/レノファ山口FC 山瀬功治選手とスポンサーシップ契約を締結致しました。今後、提携クリニックである「ひめのともみクリニック」姫野友美医師監修のスポーツ栄養プログラムを通じ、競技でのパフォーマンスを高めるためのヘルスケアサポートを行ないます。

●オフィスひめの(姫野友美先生)との契約締結の経緯はこちら

https://yamaserieko.cookpad-blog.jp/articles/713354

#姫野友美

医療法人友徳発心会

ひめのともみクリニック 院長

1978年 東京医科歯科大学医学部卒業

1979年 九州大学医学部付属病院 心療内科勤務

1980 年 北九州市立小倉病院 内科勤務

1986 年 Mayo clinic Emergency Room(U.S.A) Visiting Clinician

1987 年 東京都立広尾病院 麻酔科勤務

1989 年 木原病院勤務

1998 年 テーオーシービル診療所 心療内科勤務

2002 年 女性のための生涯医療センターViVi 心療内科非常勤勤務

2005 年 ひめのともみクリニック開設

2006 年 日本薬科大学 漢方薬学科 教授就任 ※2021年 退官

日本心身医学会専門医(評議員)、日本東洋医学会専門医、日本心療内科学会登録医(評議員)、日本温泉気候物理医学会温泉療法医、麻酔科標榜医

日本オーソモレキュラー医学会理事、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所理事、医療法人八女発心会理事

現在、ひめのともみクリニック院⻑として、オーソモレキュラー栄養医学に基づいた栄養療法や点滴療法、バイオロジカル療法を組み合わせた独自のメディカルプログラムで個々人に合わせたオーダーメイドの治療を行っている。そのかたわら、ストレスによる病気・症候群などに関するコメンテーターとして、テレビ東京系列『主治医が⾒つかる診療所』等のテレビ番組や新聞・雑誌等で活躍中。

※姫野先生との出逢いを機に、私自身も一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所認定ONE第4期(オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート/分子整合栄養医学)にて資格を取得しています。

ハーブやスパイスに含まれるポリフェノールは我々の生活の中で最も身近な抗酸化物質だ。

ポリフェノールはベンゼン環に複数の水酸基が結合した化合物の総称で、アントシアニン、カテキン、およびクエルセチンなどのフラボノイド類、カフェ酸、クロロゲン酸、およびクルクミンなどのフェノール類、エラジタンニンなどの加水分解型タンニン類、およびプロアントシアニジンなどの縮合型タンニン類などに分類される。

植物が自らを病原菌や紫外線などから守るために作り出したポリフェノールの抗菌および抗酸化作用に人の健康増進に貢献する生理活性作用があるとして注目されている。

食事由来ポリフェノールの総摂取量は成人一人1日当たり1gに達し、ビタミンC摂取量の約10倍、ビタミンEやカロテノイドの摂取量の100 倍にも値するが、食事から摂取したポリフェノールが小腸で吸収されるのは総量のおよそ5~10%にあたる低分子ポリフェノールのみで、総量の90~ 95%にあたる大部分の高分子ポリフェノールは消化されずに大腸に移動し、腸内微生物叢によって代謝されて初めて体内に吸収される。

ポリフェノールとその代謝に重要な役割を担う腸内細菌叢およびその健康増進の効果に関して、主に in vitro および in vivo の研究でこれまで判明しているポリフェノールの作用のメカニズム、腸内細菌叢への影響、およびポリフェノールと腸内細菌叢による調節機能について紹介する。

抗酸化特性

抗炎症特性

抗菌特性

抗脂肪生成特性

神経保護特性

ポリフェノールと腸内微生物叢が人の健康に影響を与えるメカニズム

ポリフェノールが腸内細菌叢の組成バランスを調節するだけでなく、同時に腸内微生物叢がポリフェノールを生物学的に利用可能な代謝産物に変換し、そのバイオアベイラビリティを向上させるなど、ポリフェノールと腸内細菌は相互に働きかけて人の健康増進に貢献する。

ポリフェノールの腸内微生物叢の多様性への影響

すでに上述通り、様々な研究でポリフェノールが腸内微生物叢の組成バランスを調整することがわかっているが、システマティックレビューにおいても、ポリフェノールは乳酸菌とビフィズス菌の成長を促進し(乳酸菌は220%、ビフィズス菌は56%増加)、クロストリジウム属などの有害な微生物叢の増殖を阻害し、胃腸障害の改善、下痢や便秘の緩和、乳糖不耐症の緩和、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患の緩和や予防に重要な働きをもたらすことがわかった。

ポリフェノールは人の消化器において非常に吸収されにくい成分にも関わらず、人の健康に明らかな有用性があるが、その種類は8000種類以上存在するといわれ、多様で複雑な構造である。

#日本メディカルハーブ協会 学術委員

河野加奈恵

https://www.medicalherb.or.jp/archives/247467

長寿研究で注目される酪酸菌

世界中の研究者たちが関心を寄せる腸内細菌。酪酸菌(酪酸産生菌)も注目されている菌の一つです。酪酸菌が作り出す酪酸は、大腸のエネルギー源として利用され大腸の正常な働きを支えていることは以前から知られていました。

近年の研究の進歩によって、酪酸は免疫系や神経系、内分泌系などの全身の健康にも影響を与えることが報告されています。こうした酪酸の働きを解明する研究には、日本人の研究者たちも貢献してきました。

世界的に長寿国として知られる日本では、長寿の秘訣を探る研究も行われています。そのなかで、酪酸菌が長寿にも関係していることが明らかになりつつあります。

  • 酪酸菌の顕微鏡データ
  • 酪酸菌の顕微鏡データ

長寿者の腸内フローラ

酪酸菌と長寿の関係について、研究で明らかになりつつあります。その一つが、京都府立医科大学が2017年からスタートさせた「京丹後長寿コホート研究」です。

京都府の北部に位置する京丹後市。この地域は、住民の人口に占める100歳以上の方(百寿者)の割合が全国平均の3.44倍と、際立って長寿者の多い地域です。男性の世界最高齢を記録し、116歳で亡くなった木村次郎右衛門さんも京丹後市で生まれ、生涯を過ごしました。

「京丹後長寿コホート研究」の一環として、京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授の内藤裕二先生は、京丹後市に住む65歳以上の人の腸内フローラを調査。比較対象として京都市に住む65歳以上の人の腸内フローラも調べました。

その結果、京丹後市に住む人ではカラダにいい作用をもたらす細菌が多く属するファーミキューテス門の割合が高いことが判明。さらに、そのファーミキューテス門の構成を詳しく調べたところ、トップ4を占めたのはすべて酪酸菌だったのです。

  • 京丹後市 vs 京都市:
    腸内フローラ比較(門)
  • 京丹後市では、京都市と比較して、プロテオバクテリア門、バクテロイデス門が少なく、ファーミキューテス門が多かった。
  • 京丹後市 vs 京都市:
    腸内フローラ比較(属)
  • さらに京丹後市のファーミキューテス門の内の上位4つの菌はすべてクロストリジウム菌という酪酸菌だった。
  • 京丹後市vs 京都市:腸内フローラ⽐較(⾨) 京丹後市vs 京都市:腸内フローラ⽐較(属)

    Naito Y, et al.
    J Clin Biochem Nutr 2019, in press.

  • 京丹後市に住む65歳以上の方51人と、京都市に住む65歳以上の方51名とで、性・年齢をマッチングさせ、腸内フローラの比較を行った。

長寿地域に住む高齢者の腸内に多いことが判明した酪酸菌。単なる長生きではなく、健康で自立した生活を送れる「健康寿命」を延ばすことが重要視されるなか、酪酸菌の注目度はますます高まっていくと考えられます。

酪酸菌を増やすには?

ここまで酪酸菌が長寿のカギを握る細菌であることをお伝えしてきました。

酪酸菌が作り出す「酪酸」は大腸のエネルギー源となり、大腸の正常な働きを支える働きがあります。そんな私たちの健康に貢献する酪酸を作り出すことができる腸内細菌「酪酸菌」。体内の酪酸を増やすには、酪酸菌の働きを促し、腸内の酪酸菌を増やしていくことが重要となります。

ここからは、体内の酪酸菌を増やす方法についてご紹介します。

食事

酪酸菌を含む食品はほとんどなく、食事から酪酸菌を摂るのは難しいのが現状です。しかし、体内の酪酸菌を増やすために有用な方法の一つに食事があります。
食事を工夫することで腸内の酪酸菌を育てることができるためです。酪酸菌は、腸内細菌のエサとなる食物繊維を摂ることによって育てることができます。

食物繊維は大きく分けると水溶性と不溶性があり、特に腸内細菌のエサになりやすい水溶性食物繊維を意識して摂ることが大切です。
水溶性食物繊維は海藻類や果物類、不溶性食物繊維は穀類や豆類に多く含まれています。例えば、わかめや昆布、大豆、サツマイモなどが挙げられます。
さらに、いま特に注目されているのが、食物繊維のなかでも腸内でより発酵しやすく、有用菌のエサになりやすい「発酵性食物繊維」です。これは、水溶性食物繊維の多くと不溶性食物繊維の一部を指し、代表的な食材として、大麦や小麦全粒粉、玄米、根菜類、大豆製品などがあります。

なお、食物繊維の1日あたりの摂取量の目安は、成人男性が21g以上、成人女性が18g以上(18~64歳)です。しかし、バランスの良い食生活を継続するのは難しいもの。酪酸菌が配合された整腸剤を活用していくのも良いかもしれません。

発酵性食物繊維を栄養源として、短鎖脂肪酸(第1回コラム参考)を産生し、腸内細菌叢のバランスを良い状態に保ちます。発酵性食物繊維を多く含む代表的な食材は、大麦や小麦全粒粉などの穀類、野菜類、果物類、海藻類、豆類などです(表1)。

運動

運動習慣の改善も腸内の酪酸菌を増やすのに有用な方法の一つです。

ある研究によると(下図)*1、息が上がるようなやや強度の高い運動を30~60分間、週に3回を6週間続けて行うことで、BMIにかかわらず酪酸菌の割合が増加し、この効果は普通体重、やせ型の人でより顕著だったと報告されています。運動期間後は酪酸菌の割合が減ってしまうとの報告もされているので、継続して運動することも酪酸菌を増やすためには重要そうです。

運動前・中・後の5つの酪酸菌の増減(BMI25未満の群とBMI30以上群の比較)

  • # 運動ありまたは、運動なしの主な効果(p<0.05)
    平均±標準誤差

*1 Med Sci Sports Exerc. 2018 Apr;50(4):747-757.

酪酸菌を育てるおすすめレシピ

酪酸菌の生存にとっては、食物繊維や多彩な食材が必要です。酪酸菌を育てるおすすめレシピについて、長寿のまち・京丹後市で食されている、さまざまな料理のレシピのうち、食物繊維を手軽に摂取できる「ずいきと三度豆(インゲン豆)の炊いたん」と「わかめのパー」の二つをご紹介します。

ずいきと三度豆(インゲン豆)の炊いたん

材料(4人分)

ずいき 100g(生でも乾燥でも可)
三度豆(インゲン豆) 50g(入手できるもので代用可)
だし 150cc
濃口醤油 大さじ2
みりん 小さじ4
小さじ4

つくり方

  • 1.ずいきを5㎝位の長さに切り、水で洗って水気をきる。
  • 2.鍋に調味料を入れ、三度豆を入れる。
  • 3.ひと煮立ちさせたら2にずいきを入れて、さらに煮る。

<豆知識>

「ずいき」とは里芋の地上部分に伸びた茎の部分です。
また、豆には良質なたんぱく質の他に、腸内細菌のエサになる食物繊維が豊富に含まれています。前述のとおり、京丹後の長寿の方々の腸内細菌には、酪酸菌が多いという特徴が見つかっています。食物繊維は、その酪酸菌の生存に欠かせないものです。

<POINT>

三度豆は、少し甘さを感じるぐらいに炊いておくと美味しいです。

わかめのパー

材料(10人分)

板わかめ 100g
炒りごま 10g
濃口醤油 50ml
40ml
みりん 50ml
砂糖 30g
50ml
煮干し 適量

つくり方

  • 1.わかめは水またはぬるま湯でさっと洗い、ボウルに入れて蓋をし、わかめ全体に湿りが入るまでそのまま置く。(2時間)
  • 2.よく湿ったわかめを包丁でできるだけ細かく切る。
  • 3.鍋に調味料と水を入れて沸騰させる。
  • 4.煮干し(大きいものは切る)を、わかめと一緒に入れて中火にし、煮汁がなくなるまで箸で炒るように混ぜながら煮る・仕上げに炒りごまを混ぜる。(粉さんしょうを入れても良い)

<豆知識>

わかめなどの海藻類には、水溶性食物繊維が含まれています。水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなり、腸内細菌を育て活性化させる働きがあります。
水溶性食物繊維も、酪酸菌の生存に欠かせないものです。

これらのレシピは、『~今に活きる~京丹後百寿人生のレシピ 第4版』(発行:京丹後市健康長寿福祉部健康推進課)に掲載されています。『京丹後百寿人生のレシピ』には長寿地域「京丹後市」の郷土料理や、腸活食材を使用したレシピが多数掲載されています。

健康のカギとなる酪酸菌を増やそう!

日本人が健康長寿を維持するためにも、「酪酸菌」は重要な存在といえるでしょう。酪酸菌は食材から直接摂取することが難しいため、酪酸菌のエサとなる食物繊維を摂り、腸内で育てることが大切です。酪酸菌を含んだサプリメントや整腸剤を使用してみるのも良いでしょう。

今回ご紹介したレシピなどを参考に、まずはバランスのとれた食生活をし、酪酸菌を育てていきましょう。

COLUMN 腸内細菌の分類と階層

生物は、基本的に「ドメイン-界-門-綱-目-科-属-種」という順で階層的に分類されます。わかりやすくヒトで例えると、「真核生物-動物界-脊索(せきさく)動物門-哺乳綱-霊長目-ヒト科-ヒト属(ホモ)-サピエンス」となります。
1000種類以上あるといわれるヒトの腸内細菌も、この階層で分類することができ、その99%以上が、ファーミキューテス、バクテロイデス、プロテオバクテリア、アクチノバクテリアの4つの「門」に属します。
最も優勢な門は、50~70%を占めるファーミキューテス門で、20~30%のバクテロイデス門、10%のプロテオバクテリア門、10%弱のアクチノバクテリア門が主な構成因子です(下グラフ)。
ファーミキューテス門は、カラダにいい作用をもたらす菌が多いとされ、いくつかの酪酸菌も、ファーミキューテス門クロストリジウム属に分類されています。アクチノバクテリア門を代表する菌が、ビフィドバクテリウム属のビフィズス菌です。プロテオバクテリア門にはエシェリシア属の大腸菌や食中毒を引き起こすカンピロバクター属などが含まれます。バクテロイデス門は、いわゆる日和見菌で、有用菌か有害菌のどちらか優勢な方に味方して作用します。

  • ヒトの腸内フローラの種類
  • ヒトの腸内フローラの種類
  • *出典:「消化管(おなか)は泣いています」 著:内藤裕二(ダイヤモンド社)

この記事を監修してくれたのは…内藤 裕二 先生

内藤 裕二先生

京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授

消化器専門医として最新医学に精通し各地で講演も行っている。消化器病学や消化器内視鏡学、生活習慣病の他、健康長寿や抗加齢医学、腸内フローラや酪酸菌研究も専門としており、「京丹後長寿コホート研究」で腸内フローラ解析に携わっている。酪酸菌と健康長寿の関係などの研究をはじめ、長年腸内細菌を研究し続けている本領域の第一人者。
『すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢 基本知識から疾患研究、治療まで』(羊土社)を上梓。

参考文献

内藤裕二他監修「百寿人生のレシピ」,京丹後市健康長寿福祉部健康推進課,2022

内藤裕二 「全ての臨床医が知っておきたい 腸内細菌叢」,羊土社,2021

内藤裕二 「酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる~今、話題の酪酸・酪酸菌のすべてが分かる!」,あさ出版,2022

腸内フローラ研究が進化したいま、 「腸活」の見直しを!

腸内環境

撮影=塚田直寛(STASH)

腸活ブームの裏側には、私たちの体に棲みつく細菌叢(ヒトマイクロバイオーム human microbiome)研究の革新的進歩があります。

「日本では古くから腸内細菌の研究が行われてきましたが、21世紀になって腸内細菌叢(腸内フローラ)を遺伝子(メタゲノム)解析できるようになり、飛躍的に発展しました。20世紀初頭には腸内環境を善玉菌・悪玉菌・日和見菌と分類してきましたが、いまでは単純に分類できないという考えに変わりつつあります。人の腸内に生息する腸内細菌は数百種類、100兆個とも。その数は、ヒトの細胞の数よりもはるかに多いのです。この腸内フローラは、獲得免疫や病原体の排除、免疫の過剰反応による炎症性疾患など、私たちの免疫機能にも大きな影響を与えていることがわかり、多くの研究が日進月歩で進められています」と内藤裕二先生。

最近の研究では、腸内フローラはうつ病やパーキンソン病、動脈硬化、糖尿病、肥満、炎症性腸疾患、リウマチ、アトピー性皮膚炎など、さまざまな病気や病態に関連していることが明らかになっています。

「健康増進・病気予防のために、マイクロバイオームの見直しは世界共通の課題です。海外では、食と薬を区別せずエビデンスが構築され、地中海食の利点にも腸内細菌が関係することも明らかに。そのため、いま海外では日本人以上に食物繊維や発酵食品の重要性を理解して、積極的に摂る人が増えています。米国の食物繊維摂取基準は24g/日。しかし日本人は食物繊維摂取率が低いため、暫定的に目標値を18~19g/日としています。それほど、現代の日本人は食物繊維を摂れていないのです」(内藤先生)。

かつての日本の食文化には食物繊維、発酵食が根づいていましたが、いま、それが崩れ始めています。60歳を機に腸内フローラは変わり、それがその後も継続される率が高いといわれています。いまこそ、科学的に腸活を見直す時期が来ています!

最新版! 知っておくべき腸活「基本のき」

これまでの研究成果でわかってきた、知っておくべき重要な腸活の基本について、ご紹介します。

[腸活の基本ー1] あなたの食べているヨーグルトはどっち?ビフィズス菌と乳酸菌は似て非なるもの

あなたが毎日摂っているのは、ビフィズス菌?それとも乳酸菌? このふたつはまったく違う菌で、ヨーグルトによって含まれている菌も異なります。

「乳酸菌は小腸までで、大腸には届きません。乳酸菌は、オリゴ糖や食物繊維などをエサにして乳酸を作り出します。この乳酸によって腸内が酸性に傾き、有害菌の増殖を抑えているといわれています。一方、ビフィズス菌は大腸に生息。ビフィズス菌は、乳酸、酢酸を作り出すことで有害菌の増殖を抑えます。いま注目されているのは、ビフィズス菌が産出する酢酸(短鎖脂肪酸)。多くの効能をもたらすことがわかってきています」(内藤先生)。

どちらの菌も大事ですが、目的を知って摂取し分けることが大切です。

ビフィズス菌と乳酸菌

[腸活の基本ー2]発酵食品と食物繊維はセットで不可欠。腸内フローラのエサになりやすい水溶性食物繊維に注目!

腸活のために、発酵食品と食物繊維、どちらが大切なのでしょうか?

「まず乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌、納豆菌、麴菌などの発酵食品は、生きた有用菌を食事で摂る『プロバイオティクス』といわれています。有用菌を小腸、大腸に直接届けて、有害菌の活動を抑えることで腸内環境を整えます。

一方、食物繊維は、有用菌を増やすためのエサ。『プレバイオティクス』といわれ、エサを摂ることで有用菌を育て、健康な腸内フローラを維持するのが目的。どちらも腸内環境のために必要です。

食物繊維で特に大切なのが水溶性食物繊維。不溶性食物繊維に比べ、発酵性が高く、腸内フローラのエサになりやすいという特徴があります。いま特に注目されているのが、食物繊維のなかでも腸内でより発酵しやすく、有用菌のエサになりやすい『発酵性食物繊維』。水溶性食物繊維の多くと不溶性食物繊維の一部を指し、その代表的な食材として、大麦や小麦全粒粉、玄米、根菜類、大豆製品などがあります。意識して摂りたい食材です」

プロバイオティクス食材

イラスト=きくちりえ(Softdesign llp)

 

プレバイオティクス食材

イラスト=きくちりえ(Softdesign llp)

[腸活の基本ー3]百寿者研究で明らかに。長寿のためにも腸のためにも植物性タンパク質がいい!

「動物性脂肪などの高脂肪食は、腸内フローラを変えてしまうほどの影響をもたらします。そのため、腸活のひとつとして、“高脂肪食の制限”も有効であると考えています。長寿者の多いことで知られる京丹後市の高齢者は、赤肉(牛肉、豚肉などの高脂肪食)はほとんど食べておらず、植物性タンパク質や魚を多く摂っています。筋力維持の観点から見ても、食物繊維摂取が少なく高脂肪食の人は、腸内環境が低下しており、“太っているのに筋力が落ちている”という傾向が見られます」と内藤先生。

長寿者は肉をたくさん食べている! というのは間違いでした。大豆、豆類などの植物性タンパク質は、食物繊維も摂取できるので、腸にも、筋肉や骨にも、いいのです。


見えてきた、次世代の「腸活」とは?

腸内細菌は、遥か昔から人体と共生関係にあり、ネアンデルタール人も現代人と同じ腸内細菌をもっていたことも明らかになっています。遺伝子解析により、詳細な腸内フローラが調べられ、腸内フローラは居住地域、民族で異なることもわかってきました。

「人種による腸内フローラの特徴が明らかになり、海外に比べて日本人にはビフィズス菌が多いことがわかりました。しかし、近年の食生活や生活環境の変化で日本人の腸内環境は変わりつつあり、ビフィズス菌が減ってきているというデータも出てきています」と内藤裕二先生。

国内でも腸内細菌には、地域差があります。例えば、100歳の長寿者が全国平均の3倍の数に上る京丹後市と京都市内の市民の腸内フローラを遺伝子解析で比較したところ、京丹後市の人には腸内環境にとって重要な酪酸菌(らくさんきん)が多かったことがわかりました。

「いま、私たちは、2000人くらいの腸内細菌を調べて血液型のように分類できる可能性について研究をしています。AI(人工知能)を使いながら5つほどの分類型に分けられるのではないかと考えています。その人の腸内フローラのタイプによって、腸内環境を改善するテーラーメイドの方法が提案できるような時代になります。次世代の腸活は、もうすぐそこに来ています」(内藤先生)。

この記事のまとめ
腸活のためには、生きた有用菌である発酵食品(プロバイオティクス)と菌のエサになる食物繊維(プレバイオティクス)の両方を摂ることが大切です。プレバイオティクスのなかでも最注目は、有用菌のエサになりやすい「発酵性食物繊維」。大麦や小麦全粒粉、玄米、根菜類、大豆製品などの摂取を意識

豆知識1

ルミナコイドが短鎖脂肪酸の元

特性が異なる様々なルミナコイド

全域の多様な細菌に届けるには複合が鍵

ルミナコイドからゆっくり酪酸を産生

腸内フローラ(常在菌)はルミナコイド(発酵性食物繊維)を食べることで、酪酸などの短鎖脂肪酸をゆっくり産み出し続けます。

ルミナコイドを摂ることが、酪酸サプリを一時的に摂るより合理的である理由です。

ルミナコイド毎に特性が違う

ルミナコイドには、食物繊維以外に、オリゴ糖・糖アルコール・難消化性タンパク質・希少糖、難消化性デキストリン・難消化性デンプンなどがあり、分子サイズや分子構造、水溶解性などの特性が異なるので、これらを考慮して原材料を選ぶ必要があります。

複合化で広域の多様な菌に届ける

ルミナコイドの特性毎に腸内での発酵スピードが違い、届く場所・届く菌の種類も異なります。また、短鎖脂肪酸である酪酸・プロピオン酸・酢酸などの産生比率も異なるので、これらを考慮したバランス配合比を考える必要があります。

豆知識2

腸内フローラに多様性がない

多様な腸内フローラが共生

腸活で短鎖脂肪酸を産み出す

多様性欠如=諸悪の根源

腸内フローラの多様性の欠如(=ディスバイオシス)と様々なトラブルとの因果関係が、最新のマイクロバイオーム(常在菌)研究で明らかに。腸内フローラに働きかけることが科学的にも合理的です。

多様性維持には短鎖脂肪酸が必須

腸内フローラが正しいエサを食べる(発酵させる)ことで、短鎖脂肪酸が産み出されます。

この短鎖脂肪酸は、「多様性のある腸内フローラ(=シンバイオシス)」の維持に不可欠な存在なのです。

短鎖脂肪酸=腸活の本質

短鎖脂肪酸は、「悪玉菌を抑え、善玉菌が優位な最適バランスに整える」「ウンチを押し出すぜん動運動や全身のエネルギーになる」など、私たちの身体の様々な機能を整える役割をしている、健康に不可欠な有機酸です。

豆知識3

食品に含まれるルミナコイド量

日本人は慢性的に不足

科学者も危機的状況を警鐘

様々な食物に含まれる難消化性成分

ルミナコイド(発酵性食物繊維)は、穀類、海藻類、野菜、芋類、キノコ類、種子類、果物、甲殻類などに含まれる、人間にとって難消化性・難吸収性の食物成分です。主食である穀類を増やすのが効率的ですが、糖質過多にならないよう注意が必要です。

毎日約6~19g不足している?

世界保健機関(WHO)では、食物繊維の理想値を25g/日としています。日本人のルミナコイドの平均摂取量は18.8g/日と、日常の食生活では慣性的に不足しています。 (厚生労働省・国民健康・栄養調査2019年)

科学者も危機的状況を警鐘

スタンフォード大学スクール・オブ・メディスンのソネンバーグ博士は、ルミナコイドの類似概念MACの摂取量を25~38g/日に設定しています。MAC不足により、飢えた常在菌が粘膜を食べ、バリア喪失の可能性を指摘しています。