愛媛新聞コラム

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アスリートに必要な栄養素を身近な食材でバランスよく取り入れる「アス飯」。提唱者の料理研究家、山瀬理恵子さんが毎月1回、愛媛の農林水産物の産地を訪ね、旬の献立を考案します。4回目はサトイモ「伊予美人」を使ったソテーをアレンジ。

スポーツの世界は勝つか負けるか。周囲の人間までもが験を担ぐこともしばしば。アスリートをサポートする私が抱いてきたサトイモのイメージは、初茜(あかね)に染まる台所でこそ存在が際立つ神聖な野菜。年初めに縁起よく亀に見立て、切り口を六角形に整えながら厚めに皮をむき、「努力が実を結びますように」と祈りを込めてお重に盛りつけるのです。愛媛で暮らすようになり、秋の風物詩「いもたき」の主役となるなど、日々の食卓になじみ深い食材として一気に距離が縮まったように思います。

芋類の中でも低カロリーなサトイモは、全身の筋肉を正常に働かせるカリウムが豊富。粘り成分ガラクタンには免疫力アップの作用があり、マイタケのベータグルカンと同様に血糖値の上昇を抑える効果も。

寒さが増すこの時期、ビタミンCの吸収率を高めるポリフェノールの一種、ビタミンP(特に筋や皮に豊富)を含むミカンを丸ごと摂取するのは、血流改善や風邪予防にもお勧め。マルチビタミン野菜のニラやオメガ3系脂肪酸が豊富なしらすを組み合わせ、さらにウイルスからのガード力を後押しします。愛媛の食材のマリアージュをご堪能ください。

 

【材料】(3、4人分)

サトイモ(伊予美人)5個▽ミカン3個▽鶏胸ひき肉、マイタケ各100グラム▽しらす50グラム▽ニラ1/4束▽ナンプラー大さじ1と1/2▽くず粉(片栗粉)大さじ3▽はちみつ大さじ1▽水400cc▽ショウガ、オリーブ油、塩各適量

 

【作り方】

①サトイモは包丁で皮をむく。フライパンでオリーブ油を熱し、薄くスライスしたサトイモを火が通るまで両面こんがり焼いて塩をふる。

②小鍋に手で崩したマイタケ、薄皮ごと小さく切ったミカン、水を入れ、弱火にかけ、ミカンが軟らかく、果肉がほどけるくらいまでコトコト煮る。

③鶏胸ひき肉、しらす、ナンプラー、はちみつを入れ、再び温まったら同量の水で溶いたくず粉でとろみをつけ、一口大に切ったニラ、①のサトイモを加え、ひと回ししたら火を止め、器に盛り、刻んだミカンの皮とすりおろしショウガを添える。

 

【ハーフタイム】

「おいしい伊予美人を農家さんからお裾分けしてもらったので送るね」。そう伝えると、電話越しにとても喜んでくれた73歳の両親。北海道十勝郡浦幌町で50年以上農業を営んでいますが、栽培しているのはサトイモではなく、北海道を代表する食材のジャガイモです。

毎年この時季になると、マイナス20度を下回ることもある厳しい寒さから身を守るため、まきストーブに火を入れ始めます。早朝から夜遅くまで一日も休まず、家族全員が協力して話し合い、自然と共存しながら挑んでいく、全力投球の農耕生活だったように思います。

食べもののありがたさを身に染みて感じられるようになったこと。よりよい明日のためにコツコツと努力を継続すること。粘り強く諦めない心で常に上を向いていられるのも、幼少期に培ったルーツのおかげかもしれません。

 

【やませ・りえこ】

アスリートのための「アス飯」を考案する料理研究家。夫は愛媛FCの山瀬功治さん。松山市在住